HOME > 教えて! > 布教伝道の基礎 > コラム伝道

コラム伝道 / 「まずは自分の疑問から」

「法話の内容が盛り沢山で何が言いたいのかわからない」と、以前の私は、よく家族に注意されていました。ついつい相手の反応が気になり、あれもこれもと話を広げ過ぎ焦点が定まらなくなっていたのです。

それからしばらくあれこれと経験する中で「自分が疑問に思ったこと」から話をはじめると、ご門徒さんとの距離が近くなることを発見しました。そこで、自分が疑問に思ったことのみにとどまらず、ご門徒さんが疑問に思われることを取り上げると、より良い法話になるのではと考えるようになりました。

二年ほど前のことです。組内の若婦の会長さん10名がお寺に集まって「仏婦大会の際に、午後からは質疑応答をしてほしい」と言われました。この要望を受けて、質問を事前に収集し5つくらいに絞ってご講師の先生に渡し、当日答えてもらうことになりました。そこで、若婦の皆さんからたくさんの質問を出していただきました。この時にはじめて、若婦の方々がどのような疑問をもっているかを知ることができました。その質問の中で、最も多かったのは「お念仏って何ですか」という疑問だったのです。

この「お念仏って何ですか」という疑問は、よくよく思い出してみると、私がご法義に出遇う前にもっていた疑問でもあったのです。当時の私は、お念仏が呪文なのか祈りなのか何なのか、さっぱりわからなかったのです。私が以前もっていた疑問と若婦の方々が今もっている疑問とが一致した瞬間でした。自分が疑問に思っていたことは、ご門徒さんも同じように疑問に思われていることを知りました。

それ以来、話材として自分が疑問に思ったことを取り上げることで、同様の疑問をお持ちのご門徒さんに共感していただけるような法話を心がけています。

2010/12 伝道部布教研究専従職員 江口覚亮