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コラム伝道 / 法味愛楽の目

ご讃題をこれと決めてもそれに合う比喩・因縁が見つからない。法話を作る上でいつも苦心するところです。私たちは日々多くの情報に接し、様々な体験をしますが、私たちのなかにそれをご法義と結びつける視点がなければ、法話の材料にはなっていきません。熟練した布教使の法話を聴聞させていただくと、日常の何気ないことのなかにも仏法を味わっておられる豊かな法味愛楽の目にしばしば感心させられます。

そんなわけで先日、数人の僧侶仲間で、与えられたテーマを法味愛楽の目から眺めるというゲームをしました。その時にのぼったお題はティッシュの箱。これを題材にしてご法義の話をしてみようということです。

ある一人はこう言いました。ジュースをテーブルに倒してしまい、慌ててティッシュの箱に手を伸ばす。しかしまだあると思っていたのが、2枚ほど取ったら後がもう出てこない。こんな時に限ってと愚癡をこぼしたことがある。私たちの人生もこれと同じ。箱を外から眺めるだけでは分からないように、ある時突然「あれっ、もう終わり!?」というのが私たちの無常のいのちである。

またもう一人はこう言いました。箱からティッシュを1枚取ると、自然と次ぎのティッシュがまた箱の外へと顔を出す。ティッシュに後のティッシュを引っ張る力があるのではない。しかし1枚のティッシュが引っ張られていくことが、自然と次ぎのティッシュを引っ張ることになる。このように、浄土へと先だっていかれた先人たちのすがたが、私たちを導いてくださり、また同じようにこの私も、浄土への道を歩ませていただく。

いまご紹介しましたのは、なかなかの優秀作品です。なかにはご披露するのが恥ずかしいものもたくさんあったのですが、出来の巧拙はともかく、これからも仏法を味わう縁を、日常のなかに見つけていく習慣をつけたいものだと思っています。

2008/01 教学伝道研究センター研究員 高田文英