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日本葬制史
書評
  • 勝田 至 (かつだ いたる)
  • 出版社・取扱者 : 吉川弘文館
  • 発行年月 : 2012年5月20日
  • 本体価格 : 本体3,500円+税

葬送と墓制の歴史をどうとらえるか
一 原始社会の葬送と墓制
二 古代の葬送と墓制
三 中世の葬送と墓制
四 近世の葬送と墓制
五 近現代の葬送と墓制

葬儀不要論を公然とぶちあげた「島田ショック」や、お布施の定額明示をうたった「イオン・ショック」によって、葬儀に関する今までの「当たり前」が大きく揺らいだのは記憶に新しい。その後、東日本大震災に際し、死別の悲しみとともに、「葬儀が出せない」ことへの悲しみが吐露され、「葬儀不要論」は、いったん沈静化しているように見える。しかし、不要論が受け入れられた必然性そのものが解決されているとも言い難く、いつ再燃してもおかしくはない。

そのような意味で、浄土真宗において葬儀はいかなる意義と必要性を持っているのかは、お互いが、しっかりと足元を見据えておかねばならない課題である。そこには、浄土真宗の教義にふさわしい葬儀のあり方とは何なのか、教義・教学的押さえが不可欠なのは言うまでもない。

その一方で、葬送儀礼という形態自体は、浄土真宗の成立以前から行われて来たし、また、個体を形成する全ての生物において、死は不可避である中で、死に対して「葬送儀礼」という形式を持つのは、おそらく人間だけであろう。つまりは、「葬儀」とは、人類の歴史における文化的・社会的営為とも言えるのであって、教義・教学的アプローチだけでなく、社会的・文化的アプローチが必要でもある。

本書において編者は、「昔も今も、あるいは今後も変わらないであろうと思われるのは葬儀が死者との『別れ』であるという社会的性格である」(8ページ)と述べている。そのような変わらない側面と同時に、「伝統的な葬送・墓制とされるものの多くの要素は中世後期以後に発達したものであり、それ以前にはそれとはまったく異なるさまざまな葬送が行われていた」のであって、その代表例が「風葬」であるとする(3ページ)。つまりは、「葬法といったものが超時代的に存在したといった考え方をもってしては理解しがたい」(同前)のであって、そのため、「各時代の葬送・墓制の実態を見てみる必要がある」というのが本書の「基本的構想」(4ページ)である。

この基本構想に基いて、原始・古代・中世・近世・近現代における葬儀や墓制の実態を克明に叙述しているのが本書である。単なる概説書にとどまらず、最新の研究成果を反映させた、きわめて読み応えのある意欲作である。執筆者の中には、意図が不揃いな論攷もあるが、これも本書のバラエテイーな一面と見ることができ、充分楽しめる。


評者:満井 秀城(浄土真宗本願寺派総合研究所教学伝道研究室長)


掲載日:2012年09月10日