- 出版社・取扱者 : 角川学芸出版(角川ソフィア文庫)
- 発行年月 : 2009年7月25日
- 本体価格 : 本体590円+税
目 次 |
はじめに 一 典座の心得 二 典座のつとめ 三 米を研ぐ即ち禅 四 効率のよい食膳 五 仕事の手順 六 典座の心得 七 敬って作る、敬って供す 八 僧食九拝 九 典座の先達に会う 十 禅師、食の真理に目覚める 十一 典座は一山の住職の心持で 十二 食に上物下物なし 十三 人に上品下品なし 十四 当時の日本の典座 十五 禅道の本分 十六 三心 喜んでいただく 十七 三心 天地の思いやりを受ける 十八 三心 天地いっぱいをいただく 道元禅師の生涯(付 年譜) |
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本書は、長年「典座(てんぞ)」(禅寺の食事係)を務めてきた藤井宗哲氏が、日本曹洞宗の開祖・道元禅師の著した『典座教訓』を現代語訳し、自らの体験に基づきながら平易な言葉で解説を加えたものである(ただし、藤井氏が執筆途中で亡くなったため、後半部分の解説は柿沼忍昭氏の手による)。『典座教訓』は日常の食事にまつわる指南書であるが、道元はその中に禅、仏道の核心を説いており、禅門の重要な典籍の一冊とされている。
また、「わずか一本の茎、葉とはいえ、荘厳な大寺院となり、たとい小さな根っ子、米粒でもお釈迦さまの大法説と変らないのだ」(56ページ)、「粗末な野菜だからといって軽んじ、いいかげん簡単に、その場限りの投げやりにあしらうのではなく、仏のおん命と思え」(121ページ)、といった、飽食の時代に生きる私たちの心に響く警句に満ちた書でもある。
さらに、藤井氏が残した精進料理レシピも掲載されており、読むだけでなく、実際に精進料理を作り食すという楽しみ方も出来る構成になっている。
禅についての格好の入門書であると同時に、私たちの日常生活を見つめ直すきっかけとなる一冊と言えよう。
評者:爪田 一壽(教学伝道研究センター研究員)
掲載日:2009年12月10日