- 出版社・取扱者 : 河出書房新社(河出文庫)
- 発行年月 : 2011年5月20日
- 本体価格 : 本体570円+税
目 次 |
一 序言 二 道元の修行時代 三 説法開始 四 修行の方法と目的 五 親鸞の慈悲と道元の慈悲 六 道徳への関心 七 社会問題との関係 八 芸術への非難 九 道元の「真理」 付録−道元(和辻 哲郎) 道元略年譜 解説「知られざるある者」を求めて(頼住光子) |
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道元の言葉は鋭い。加えて著者である和辻哲郎(1889〜1960、倫理学者)の言葉にも力がある。本書では、道元の言葉に、和辻の思想の言葉が絡まり合い、「ただ身心を仏法に投げすてて」(73ページ)悟道を求める道元の姿が描き出されている。
和辻は時代背景を加味しつつも、道元の言葉・思想に光をあてていく。道元のひたすら仏法のみに没入していく態度が、時代を超える眼差しで、社会・人間を打ち抜くからである。女人禁制の道場について、「日本国にひとつのわらひごとあり」(122ページ)と断じた道元の批判精神は、「如実知見」を説いた釈尊を想起させる。
「五 親鸞の慈悲と道元の慈悲」を始めとして、しばしば親鸞思想と対比して論が進められている点も興味深い。
なお、本書は『日本精神史研究』(岩波書店、1962年)の中の一篇「沙門道元」を文庫本化したものである。
評者:藤丸 智雄(教学伝道研究センター常任研究員)
掲載日:2011年10月11日