- 出版社・取扱者 : 岩波書店(岩波新書)
- 発行年月 : 2011年6月21日
- 本体価格 : 本体800円+税
目 次 |
はじめに 1章 教科書が推進する宗教教育−日本は本当に政教分離か 2章 なぜ宗派教育的なのか 3章 教科書が内包する宗教差別 4章 なぜ偏見・差別が見逃されてきたのか 5章 海外の論争と試行錯誤 6章 宗教を語りなおすために あとがき 主要文献 |
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著者は、東京大学大学院人文社会系研究科准教授の藤原聖子氏。著者は2006年から2008年にかけて、「世界の公教育で宗教はどのように教えられているか」というテーマで共同研究を行ってきた。本書は、同研究を踏まえて、海外の事情と比較しながら、日本の公教育における問題点——とりわけ高校の倫理の教科書の問題点——を明らかにするものである。
日本では一般的に、教科書は特定の見解に偏らない中立的な立場に立つと見なされる。したがって、宗教についても特定の宗派、宗教を差別することなく、すべてに対して中立であると受け止められている。しかし、実は教科書には「特定の宗教に関する不用意な価値判断、偏見・差別が随所にみられる」(はじめに)と本書は指摘する。その上で本書は、キリスト教とユダヤ教、浄土真宗と浄土宗などの間に、教科書が優劣をつけている記述の実例を紹介しながら、問題点を浮き彫りにしていく。
評者:鈴木 健太(教学伝道研究センター元研究助手、北海道武蔵女子短期大学専任講師)
掲載日:2011年10月11日