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傷ついた日本人へ
本の紹介
  • ダライ・ラマ14世 (だらいらま14せい)
  • 出版社・取扱者 : 新潮社(新潮新書)
  • 発行年月 : 2012年4月20日
  • 本体価格 : 本体680円+税

第一章 自分の人生を見定めるために
第二章 本当の幸せとはなにか
第三章 私はどこに存在しているのか
第四章 苦しみや悲しみに負けそうになったら
第五章 心を鍛えるにはどうしたらいいか
第六章 数式では測れない心というもの
第七章 この世で起こることには必ず理由がある
ダライ・ラマ法王を迎えて
チベットと日本の絆

ダライ・ラマ法王は東日本大震災後に日本を訪問し、各地で講演を行った。それを書籍化したのが本書である。

法王は、人は命ある限り煩悩から逃げられないのであり、煩悩が苦を生むのだから、煩悩を断滅する努力が必要であると説き、仏教の基礎的な教えである「縁起」「無我」「空」などから学ぶべきことを語っている。ところで、仏教は「因果の道理」を説く。これは「悪いことをすれば悪い結果を、良いことをすれば良い結果を招く」と理解されることが多く、被災者について考える際の課題となる。これについて法王は、震災(地震そのものではなく地震による災害)を起こすに至った因果関係はあまりにも複雑で「何が因であるかを私たちの頭で理解することは不可能」と述べ、その上で、すでに起きてしまったことを変えることはできないが、日本は第二次世界大戦で多くの街が焼け野原となりながらも復活したのだから、この震災からも復興を遂げる力があると信じていると話す。

震災後、我々はどうするべきなのか、その手がかりを与えてくれる。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2012年12月10日