- 出版社・取扱者 : 大蔵出版
- 発行年月 : 2012年10月15日
- 本体価格 : 本体4,400円+税
目 次 |
はじめに 略記号 第一章 序論 第二章 仏伝の考察 第三章 仏伝としての法華経 第四章 挿話の考察 第五章 法華経の成立をめぐる諸問題 引用文献 注記 おわりに 索引 |
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著者はインド仏教説話・仏伝研究を専門とする仏教学者であり(仏伝=ブッダの伝記)、仏教説話文献『ディヴィヤ・アヴァダーナ』『マハーヴァストゥ』の翻訳で知られる。
著者は「あるとき、ふと『法華経は仏伝ではないか』と想定して読みはじめると、もう仏伝としてしか法華経が読めなくなってしまった」(35ページ)と述べ、本書で法華経研究に新しい視座を提起する。本書では大別して、法華経と仏伝、法華経の「一乗」と般若経系の「大乗」、および法華経と説一切有部の文献という3テーマが論ぜられるが、特に第一のテーマ「法華経は仏伝をベースに構成されている」について、著者は先行研究を簡潔にまとめた上で精緻に考察し、法華経は万人が成仏できる「新たな法門」を説くために仏伝を再構成しながら編纂されたとの結論に至る(仏伝と法華経の各エピソードの対応表を207ページに掲載)。法華経と仏伝の予備知識がある程度必要だが、論旨が明快で文体も平易なので、入門者にも読みやすい。
評者:日野 慧運(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)
掲載日:2012年12月10日