「一緒に学ぼう西本願寺のおつとめ」は、聖典に説かれている内容を学び、一緒に声を出して唱え方を学ぶ講座です。
今年度は、「正信偈」を中心に学びます。講座は「座学」と「実践」の二部に分かれ、前半の「座学」の時間は、総合研究所の研究職員が、「正信偈」に説かれている教えの内容について解説し、後半の「実践」の時間は、おつとめを指導する専門講師が、合掌礼拝などの作法や「正信偈」のとなえ方についてやさしくお伝えします。
第3回「正信偈」のまとめ
日時 2022(令和4)年9月27日(火) 10:00~11:30
会場 Zoom(オンライン開催)
講師 座学 西村慶哉(総合研究所研究助手)
実践 桃園裕成(勤式指導所主任)
人数 47名
当日の内容
【座学の内容】
第3回目の座学では、『正信偈』の中、「依経段釈迦章」にあたる「如来所以興出世」~「難中之難無過斯」(『日常勤行聖典』11頁~16頁)までの内容について学びました。
1.出世本懐
「如来所以興出世」から「応信如来如実言」までのご文では、お釈迦さまの出世本懐について述べられています。「出世本懐」とは「この世にお出ましになられた本意」と理解されます。
お釈迦さまの説法はご生涯の中で、八万四千ものみ法を説かれたと伝わります。日本の各宗派を見ても、それぞれで読まれているお経は、『法華経』や『般若心経』などさまざまです。では、数あるお経の中でも、お釈迦さまがもっとも説きたかった教えは何なのか。親鸞聖人は『仏説無量寿経』と見抜かれていきました。それは、この世が五濁悪世という五つの汚れに満ちた世界だからと示されます。煩悩のままに生き、仏さまになかなか目を向けようとしない私たちは、まさに五濁悪世に暮らしていると言わざるを得ないでしょう。その煩悩のままに生きる私たちこそ救いの目当てである、とお誓いくださったのが阿弥陀仏です。ですから、五濁悪世に生きる私たちは、阿弥陀仏の本願にしたがう他に救いの道はありません。だからこそ、お釈迦さまの出世本懐は『大経』を説くためであることが知られます。
2.浄土真宗の信心の利益
次に「能発一念喜愛心」~「難中之難無過斯」のご文では、信心の利益について示されています。ここでは、阿弥陀仏の信心をいただいた利益として、
1.不断得生(煩悩をもったまま浄土へ往生して仏となる)
2.平等一味(聖者でも悪人でも分け隔てなく等しく救われる)
3.心光常護(信心の人は常に阿弥陀仏の摂取の光明に護られる)
4.横超五趣(命終われば往生し必ず仏となる身に定まる)
5.諸仏称讃(あらゆる仏からほめ称えられる尊い人となる)
の五つの得益が示されています。
総じていえば、浄土真宗の利益とは、煩悩のままに生きる凡夫が信心をいただいたとき、この身このままで仏になる身へと定まらせていただくというこの上ない利益です。以上のことを、座学の時間で学びました。
【実践の内容】
第3回目の実践の時間では、「正信偈」のまとめとして草譜・行譜および作法についておさらいしました。要点を以下に示します。なお、文中に( )で出される算用数字は、『日常勤行聖典』のページ数を表しています。
■作法についてのおさらい
〇身だしなみを整える
・本尊に進む前に服装を整え、式章をお持ちであればかける。式章はまっすぐ平行になっているか確認する。
○合掌礼拝
・身だしなみを整え仏前に座ったら合掌・礼拝する。合掌する時、両手は指を伸ばして揃える。
・礼拝の時は上半身を45度傾ける。過度に下げる必要はない。
そして一呼吸おいてから両手をなおす。〇経本の扱いについて
・経本を開くときは、左手でもって右手で開く。
・経本を扱う際、大切なみ教えが込められているという意識を常に持つ。
・経本を頂戴するときは円を描くように上にあげ、垂直より手前くらいで止める。
・鏧をたたくとき、経本は左手で保持する。
■草譜のポイント
〇要点の振り返り
・出だしの音(出音)は、ハ長調の「レ」の音。
・四句ごとに音が二段階下がり、次の句でもとにもどる箇所(四句下がり)がある。
・経文に付された線(※「希-有」など)は「火急」という。二文字を二拍分で、前を長く後ろを短く読む。行譜でも同じ。
・息継ぎは、各句の終わりごとにするが、例外的に息を続ける箇所もある。「是人名分陀利華-弥陀仏本願念仏」(15,16)この二句は息を切らない。行譜も同じく二句続ける。
・「引」とある箇所は二拍でとなえるが、一字目を1.5拍、二字目を0.5拍のテンポでとなえる。ただし。「中夏日域」(17)の「日域」は等拍といい、拍を1拍、1拍でとなえる。
〇「善導独妙」以降のポイント
・「至安養界証妙果」(28)…「次第にゆっくり」とあるが、実際ゆっくりになるのは最後の三字「証妙果」から。それまでは「引」なので倍の長さ。
・「善導独明仏正意」(29)…独吟。複数でとなえるときは調声人のみがとなえる。出音は「ソ」の音から。
・「開入本願大智海」(29)…文字の右肩に「下ル」と書いてある。箇所は音が下がる。
・「弘経大士宗師等~唯可信斯高僧説」(35)…拍の長さに注意。
「弘」①、「経」②、「大」②、「士」①,「宗」②、「師」①、「等」④最後の「等(とう)」は四拍目に「う」をきちんとつける。・「唯可信斯高僧説」…草行共通の節。「唯可」は「ファ/ソ/ソ」と上がる。「信斯」のあとで息継ぎ。最後に「説」で下にさがる。
・この一句は徐々にゆっくりとなえて、おわるように拍を外す。
■行譜のポイント
〇要点の振り返り
・草譜のように四句下がりしない。
・行譜の時の「引」のとことは一音あがリ「ミ」の音。
・「善導独明」出音は草譜と同じく「ソ」から。
〇「善導独妙~」以降のポイント
・「善導独明仏正意」(29)
「善」は「ぜ」も「ん」も同じ拍の長さで音を切り替える。
「導」は二字ガナ。「ど」を1.5拍、「う」を0.5拍。
「独」が難しい箇所。「どー/お/おく」。言葉よりも音を聞いて覚える方がわかりやすい方も多い。ここで息継ぎ。
「意」は8拍。「いー」を2拍、その後、上がって下がる節を2拍×2の4拍。最後に音を下げて2拍。・「矜哀定散与逆悪」(29)
「矜哀」は、「こーう」を発音してから「う」のまま上にあげ、上げた音で「あー」と出し、音を下げて「あい」と折り曲げるようにとなえる。・「悪」はまず「あー」と伸ばし、「あ」で上げ、「く」でもどす。
・「光明名号顕因縁」(29)…一句一息でとなえる。
・「開入本願大智海」…「願」は最後に少しユル。早くしすぎない。
実践の時間では、以上のことを学びました。
次回は念仏和讃にうつります。最初の三首を学んで行く予定です。