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讃題の例と解説 / 解説4
ああ、弘誓の強縁、多生にも値ひがたく、真実の浄信、億劫にも獲がたし。たまたま行信を獲ば、遠く宿縁を慶べ。

(総序、註釈版132頁)

現代語訳

ああ、この大いなる本願は、いくたび生を重ねてもあえるものではなく、まことの信心はどれだけ時を経ても得ることはできない。思いがけずこの真実の行と真実の信を得たなら、遠く過去からの因縁をよろこべ。

(『教行信証(現代語版)5頁』)

全体の味わい

阿弥陀如来の本願のはたらきは、遠い過去世からの因縁によってあうことのできるものであって、私たちのはからいを超えたものであると、凡夫が真実の教えに出あうことの難しさと、はからずもあうことの喜びが示されています。
数多の縁により、私を本願の教えに導いてくださった、阿弥陀如来をはじめとする様々な方の尊いはたらきを、ともに喜ばせていただきましょう。

み教えのポイント

弘誓にあう

  • ・「値ひ(もうあひ)」とは「あう・であう」の意。古語の「あふ」には「こちらが相手に会うのではなく、相手がこちらにやってきて出くわすの意」(『古語大辞典』小学館58頁)がある。
  • ・弘誓に「あう」とは、真実の行信を獲ることであり、本願の名号を聞信することである。

宿縁を慶ぶ

  • ・「宿縁」とは遠い過去世からの因縁のこと。ここでは、阿弥陀如来をはじめとする諸仏・菩薩の導きを表す。蓮如上人は宿縁によって本願にあうことを『御文章』に「まことによろこびのなかのよろこび、なにごとかこれにしかん」(註釈版1151頁)と示されている。

  • 『一念多念証文』には「慶はうべきことをえてのちによろこぶこころなり」(註釈版685頁)と示されている。「慶」の字に、今すでに確かな救いのなかにあることのよろこびが表わされている。

法話作成のヒント

よびつづけてこられた如来のお心を語る

  • ・本願の教えは私たちのはからいによってあうものではありません。阿弥陀如来が南無阿弥陀仏の声となり遠い過去世から私たちをよびつづけてこられたそのはたらきによってあうことのできるものです。
  • ・したがって、私たちにとっては偶然の出あいであっても、如来にとっては偶然ではありません。

如来の恩徳をよろこび念仏の相続をすすめる

  • ・いま私たちが念仏申していることは、当たり前のことではありません。そこには、如来の尊いはたらきがあったのでした。如来の広大な恩徳をよろこび、感謝の思いで念仏を相続する生活をすすめましょう。
  • ・『領解文』には「このうへの称名は、御恩報謝と存じよろこびまうし候ふ」(註釈版1227頁)と、本願の救いに出あった上の念仏は、如来の恩徳をよろこび感謝する念仏であると示されています。

語釈

  1. 強縁
    強力な因縁のこと。強大な力をもった本願のはたらきを意味することより、「弘誓の強縁」といわれる。
  2. 浄信
    阿弥陀如来よりたまわった浄らかな信心のこと。
  3. 億劫
    百千万億劫の略。数え切れないほどの長い時間をいう。
  4. 宿縁
    宿世(過去)の因縁のこと。真実に背いているものを、本願の教えへ導こうと如来が与えられた善き因縁のことをいう。

出拠とその解説

  • ・「多生にも値ひがたく、真実の浄信、億劫にも獲がたし」の出拠には、『仏説無量寿経』の「如来の興世に値ひがたく、見たてまつること難し。諸仏の経道、得がたく聞きがたし。菩薩の勝法・諸波羅蜜、聞くことを得ることまた難し」(註釈版82頁)の文や、善導大師『観経疏』「散善義」の「真宗遇ひがたく、浄土の要逢ひがたし」(七祖註釈版501頁)等の文が挙げられます。
  • ・親鸞聖人は、先の『仏説無量寿経』のご文を『浄土和讃』に「如来の興世にあひがたく諸仏の経道ききがたし 菩薩の勝法きくことも 無量劫にもまれらなり」(註釈版568頁)と詠われています。