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例話の紹介 / (5)雨の帰する処
『大論』(大智度論)にいはく、「雨の堕つるに、山の頂に住まらずしてかならず下れる処に帰するがごとし。もし人、心をもつてみずから高くすれば、すなはち法水入らず。もし善師を恭敬すれば、功徳これに帰す」と。

(『往生要集』、七祖註釈版1174頁、『大智度論』引用文)

【概要】

り高ぶった心で教えを聞くことを戒めたたとえです。雨が降ると山頂には住まらずに、必ず低い処に流れこむようなもので、もし人がり高ぶって自分を高くするならば、法の水は入らない。もし(自分を低くして)良い師を敬うならば、教えの功徳はその人に入り込むと説かれています。

【解説】

  • ・山頂とはり高ぶった心をたとえています。低い処とは己を虚しくして素直に仏法を聞こうとする心のことで、雨が住まることは教えの功徳に満たされることをたとえたものです。
  • ・浄土真宗の教えから味わうならば、自力のはからいを戒めたたとえと見ることができます。世間の常識や自分の理性のほうに固執するがゆえに、私たちの思議を超えた如来の本願の救いをそのままに受けいれられず疑うことを戒めています。

【補足】

  • ・「正信偈」に「邪見・慢の悪衆生、信楽受持すること、はなはだもつて難し。難のなかの難これに過ぎたるはなし」(註釈版204頁)とあるご文と併せて味わうことができます。