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例話の紹介 / (4)香木

【概要】

ある父親が、息子二人に高価な香木を二つにわけて与えた。兄の包みは薄いので香気が外へと薫っていたが、弟の包みは分厚かったので香気が感じられなかった。
すると弟は、包みの厚薄に気づかず、香気の有無ばかりに気をとられて、「親といっても信用はできない。私にくれたのは香木ではなく、にせ物かも知れない」と疑いをおこした。
ところが、父親のところに兄弟が集まったとき、もらった包みを開いてみると、なかの香木になんら違いはなかったという。
徳のある人は兄のように、煩悩の包みが薄いので信心歓喜の香気があたりに薫って、見る人聞く人が、ありがたい人であると敬いのまなざしをむける。煩悩の包みが分厚い私たちは、弟のようになかなか喜びの香りが外へあらわれない。
しかるにそれは、包みの厚い薄いの違いであって、如来よりたまわった信心に違いはないのであるから、決して信心の有無を疑ってはならない。

【解説】

  • ・如来回向の信心は一味の信心であり、表に現れる喜びのすがたに相違があるからといって、自身の信心の有無を疑うべきでないことをあらわす例話です。
  • ・田淵静縁『布教大辞典』(法蔵館)より。