- 出版社・取扱者 : 朝日新聞出版(朝日新書)
- 発行年月 : 2018年10月30日
- 本体価格 : 本体890円+税
目 次 |
はじめに 第1章 ペットの極楽往生 第2章 ペット葬の歴史 第3章 魚や虫を弔う 第4章 草木の霊魂を慰める 第5章 ヘンテコな供養塔 第6章 AIBOの葬式 対談 ロボット供養 おわりに 参考文献 |
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著者は浄土宗の僧侶であり、雑誌記者の経験を持つフリージャーナリストでもある。ペットは成仏できるのか?これが浄土宗内で議題となり、二通りの主張がなされた。一つは、動物がただちに成仏することはできず、一旦人間に生まれ変わる必要がある、というものである。もう一つは、阿弥陀如来の光明はすべてに届くのだから、動物も浄土に往生できる、というものである。
この議論の背景には、ペットを家族の一員として過ごし、ペットが死んだ時に寺院の住職に葬儀を依頼する人が近年増えつつあることがある。それに際して飼い主が住職に「(ペットが)成仏できたのでしょうか」と尋ねる場面が少なくないと言う。それが、上記の議論の元となった。だが、「成仏できたのでしょうか」という質問は、仏教の教義を知ろうとしていると言うより、「お寺に行けば供養してくれて、儀式をしてくれたら、きっといい結果になるだろうという思い」(279ページ)の表れであろう。
本書は、さまざまな供養の形を追ったものである。本書によれば、ペットだけでなく魚や虫、植物、さらには人形、手紙、ロボットといった非生物の供養が日本の各地で行われている。
供養の対象に共通しているのは、それをしようとする側の「思い」が込められていることである。「思い」が込められれば、それが人であれ人以外であれ、弔いの対象になる。対象への「思い」こそが、葬儀を行おうとする原動力と言える。人形供養の主催者の発言「人形供養祭を見ていると、弔いの意義がよく分かります。昨今、直葬や家族葬が増え、葬送の希薄化が言われていますが、それは費用の問題や宗教者の側の問題であって、葬式をしたくないということではないのです」(225ページ)は、それを端的に示している。
人はさまざまなものに「思い」を込めている。葬儀を執り行う側は、その「思い」に応えられるかどうかを問われていると感じさせられる。