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『歎異抄』の味わい -第一条・第二条・第四条より-
本の紹介
  • 梯 實圓 (かけはし じつえん)
  • 石田 慶和 (いしだ けいわ)
  • 中西 智海 (なかにし ちかい)
  • 芦屋仏教会館 (あしやぶっきょうかいかん)
  • 出版社・取扱者 : 自照社出版
  • 発行年月 : 2007年6月3日
  • 本体価格 : 本体800円+税

『歎異抄』(第一条・第二条・第四条)
善悪を超えて-第一条より-(梯 實圓)
生死いづべき道-第二条より-(石田 慶和)
“すゑとほりたる慈悲”のこころ-第四条より-(中西 智海)
あとがき(伊藤 信吉)

本書は、『歎異抄』第一条、第二条、第四条をテーマとした短編講話集である。芦屋仏教会館の創立80周年を記念して行われた、浄土真宗に造詣が深い3名の講師による連続講座の記録が収められている(同会館は丸紅商店<現・丸紅>の初代社長・伊藤長兵衛氏が1927年に創立。定例仏教講座などを開催している)。

まず第一条は、梯實圓・本願寺派勧学の講話である。梯氏は、『歎異抄』という書物の性格や、著者と推定される唯円房にまつわるエピソードに触れた後、『歎異抄』における善悪について論じ、阿弥陀仏の本願が「老少・善悪の人をえらばれず」といわれる真意について言及している。

また第二条は石田慶和・龍谷大学名誉教授(本願寺教学伝道研究所元所長)が、第四条は中西智海・本願寺派勧学がそれぞれ担当している。石田氏は、極楽浄土への道を聞くために、いのちがけで京都の親鸞聖人を訪ねて来た関東の念仏者たちを取り上げ、「信」の世界に入る意義について語っている。一方、中西氏は仏教における「愛」「慈悲」を論じて、人間愛の限界と阿弥陀仏の慈悲の深さを説いている。


評者:前田 壽雄(教学伝道研究センター研究員)


掲載日:2008年9月10日