- 出版社・取扱者 : NHK出版
- 発行年月 : 2015年4月1日、2015年10月1日
- 本体価格 : 本体1,810円+税
目 次 |
『親鸞聖人からの手紙~今、ここでの救い』 はじめに 第一回 親鸞聖人の生涯と「御消息」 第二回 臨終の善し悪しを問わず~第十六通 第三回 信心の定まるとき往生また定まる~第一通 第四回 無明の酒に酔う人間~第二通 第五回 他力と自力のちがい~第六通 第六回 子の義おもいきりたり~善鸞の義絶、第八通 『親鸞聖人からの手紙~こころは如来とひとし』 第七回 信心よろこぶひとは如来とひとし~第十三通 第八回 アミダ仏はいろもなくかたちもなし(無上仏)~第十四通 第九回 念仏のために権力者を利用する~第十七通 第十回 念仏訴訟事件の周辺~第二十五通 第十一回 和歌の諸仏、諸神をそしることなく~第二十七通 第十二回 救われることは救うこと~往相と還相の回向、第二十一通 あとがき |
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NHKラジオの番組「宗教の時間」で、「親鸞聖人からの手紙」が放送されている(2015年4月~翌年3月)。そのガイドブックとして出版されたのが本書である。
親鸞聖人の御消息(手紙)は、43通が現存しており、いずれも聖人晩年のものである。聖人は壮年期を関東で過ごし、教化により多くの人々が門弟となった。聖人はやがて京都に移り住んだが、聖人が去った後の関東では、教えの理解の違いから論争や混乱が生じていた。それに対応するため、聖人は手紙により関東の門弟からの問いに応じてきた。
本書は、手紙の単なる解説に留まらない。著者は「あとがき」で「(聖人の手紙が著された)八百年前も、現代も私は人間の愚かさ(煩悩性)という面では何も変わっていないと思う」「仏法は世俗にあって世俗を超えたもの、人間にあって人間を超えたもの、(中略)言葉をかえていえば、世俗や人間というものを絶対化しない、つねに相対化するという立場に仏法は立脚する」と語る。本書は、聖人の手紙を通して、現代の私たちの生き方を問い直そうとするものである。仏教を学ぶのは、知識を増やすためではない。自己の生き方を点検するためのものである。本書を通して、聖人が教えを説かれたことの意義に、改めて気づかされる。
※本体価格 : 本体1,810円(各、905円)+税
評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)
掲載日:2016年2月10日