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絵物語 親鸞聖人御絵伝-絵で見るご生涯とご事蹟-
本の紹介
  • 岡村 喜史 (おかむら よしふみ) 監修
  • 本願寺出版社 (ほんがんじしゅっぱんしゃ) 編集
  • 出版社・取扱者 : 本願寺出版社
  • 発行年月 : 2015年11月1日
  • 本体価格 : 本体1,000円+税

はじめに
  「御絵伝」と『御伝鈔』の概略
  「親鸞伝絵」の成立の流布
  「御絵伝」(四幅)の概要
  「御絵伝」(四幅・八幅)の比較
本願寺聖人親鸞伝絵〈上〉
  一、(第一段) 出家学道(一)
  二、      出家学道(二)
  三、(第二段) 吉水入室
  四、(第三段) 六角夢想
  五、(第四段) 蓮位夢想
  六、(第五段) 選択付属
  七、(第六段) 信行両座
  八、(第七段) 信心諍論
  九、(第八段) 入西鑑察
本願寺聖人親鸞伝絵〈下〉
  十、 (第一段)師資遷謫(一)
  十一、     師資遷謫(二)
  十二、     師資遷謫(三)
  十三、     師資遷謫(四)
  十四、(第二段)稲田興法
  十五、(第三段)弁円済度
  十六、(第四段)箱根霊告
  十七、(第五段)熊野霊告
  十八、(第六段)洛陽遷化(一)
  十九、     洛陽遷化(二)
  二十、(第七段)廟堂創立
奥書
附録
  「御絵伝」関連人名解説
  「御絵伝」関連年表
  「御絵伝」関連地図
  「御絵伝」(八幅)の概要[本願寺蔵]
み教えとともに
 《一》生涯を決めた夢告
 《二》門弟によって伝えられた御影
 《三》おう盛な執筆活動
 《四》名号本尊―言葉となってはたらく仏さま

平安末期から鎌倉時代という、激動の世を生き抜いた親鸞聖人。その90年にわたるご生涯をどこで、どのように過ごされたのか。それを知るもとになるのが「親鸞伝絵」である。

「親鸞伝絵」とは、聖人のご生涯とご事蹟を、聖人のひ孫にあたる本願寺第三代・覚如上人が絵と詞書き(説明文)でまとめた絵巻物である。親鸞聖人の三十三回忌を契機として作成が始められた。本書で図解される「御絵伝」とは、「親鸞伝絵」から図絵を抄出し、掛け軸としたものである。本願寺をはじめとした浄土真宗の寺院では、報恩講を勤める際に本堂の余間に掛け、『御伝鈔』(「親鸞伝絵」から詞書きを抜き出したもの)を拝読する。聖人のご苦労を偲ぶとともに、ご恩に感謝するというこの伝道方法は、江戸時代には各寺院に広まり、現在に至るまで各地で続けられている。このような方法で、人々は親鸞聖人のご生涯を知ることができたのである。

しかし、『御伝鈔』の言葉は格調高く記されているため、現代に生きる我々にとって難解である。また、「御絵伝」を近づいて細部まで鑑賞する機会は、そうあるものではない。

本書は、普段なかなか近くで見ることがない「御絵伝」を鮮明な画像と分かりやすい図解、対応する『御伝鈔』の引用を付して解説している。特に、図解部分は描かれる人物が歴史上の誰に相当するかが記されており、巻末にある関連人名解説を合わせて読むことで、「御絵伝」の理解を助けてくれる。

「御絵伝」は、聖人のご苦労を偲びご恩に感謝するための法物であり、聖人のご生涯を知るための基礎史料である。そのような「御絵伝」を、親しみを持って読める一冊である。


評者:長谷山 説子(浄土真宗本願寺派総合研究所臨時勤務員)


掲載日:2016年3月10日