目 次 |
第一章 お母さんは疲れている 第二章 親ならばこそ、子ならばこそ 第三章 子育てと仏教 あとがき |
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波乱に満ちた半生を歩み、中央仏教学院(浄土真宗本願寺派の教育機関)で学んだ大平光代氏と、児童精神科医師であり浄土真宗本願寺派僧侶でもある友久久雄氏が、子育てについて対談した。それをまとめたのが本書である。
本書でまず強調されるのは、「受け容れる」ことである。人生には、努力してもどうにもならないことがある。そんな時、自分の置かれた状況を「受け容れるしかない。受け容れがうまくいくと、次のステップを踏める」と大平氏は語る。ここで言う「受け容れる」とは、評者なりに言い換えれば「これさえあれば(あるいは“なければ”)、という事柄がもはや変えられないという前提で、どうすればよいかを考えること」となろう。
「受け容れる」ことが大切であるのは、子育てにおいても同様である。親が我が子を見る場合、「直して欲しい点」が気になりがちである。しかし、友久氏は「よいところを見つけて認められている子どもは、自分にはいいところがあるという自尊心、別の言い方をすると自信を持っています。だから伸びる」と言う。
本書を読み進めていくと、両氏の考え方の背景には仏教があることが見えてくる。努力や成果などを重視する「世間的なものさし」と別の視点を持つことで、困難に遭った時、道が開けてくる。そんなことを、本書から教えられる。
評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)
掲載日:2015年10月13日