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真宗門徒はどこへ行くのか 崩壊する伝承と葬儀
本の紹介
  • 蒲池 勢至 (がまいけ せいし)
  • 出版社・取扱者 : 法蔵館
  • 発行年月 : 2015年4月20日
  • 本体価格 : 本体1,800円+税

I 真宗の暮らしを訪ねて
II 真宗門徒の力
III 葬儀の崩壊と再生
あとがき

著者は、同朋大学仏教文化研究所の客員研究員であり、真宗大谷派長善寺の住職でもある。特に「真宗と民俗」という観点で研究を続け、これまでに多くの書籍を発行している。

本書は、著者がこれまで寄稿してきた原稿や、講演記録などで構成されたものとなっている。

特色としては、著者がこれまで続けてきた「真宗門徒の伝承文化」(浄土真宗の信仰に根ざした生活ぶり)の現地調査を、写真入りで紹介することで、その地域に伝わる信仰生活の風土や土徳が見て取れる点にある。同じ信仰に生きながらも、地域ごとに「真宗門徒の伝承文化」が異なっていることを確認できる。

しかしながら、これまで地域に受け継がれてきた伝承文化が現在、崩壊してきている。それが顕著に表れているのが葬儀の現場であった。葬儀も文化であり、葬儀の仕方が変化したことの背景には、地域崩壊があると著者は見ている。現在の葬儀でキーワードとなる花祭壇や写真、遺骨に関する解説などを盛り込みながら、「激しいまでの社会変化と価値観の変化」に真宗門徒は何を見出して生きていけばいいのか、大きな問題を提起している。


評者:網代 豊和(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2015年10月13日