- 出版社・取扱者 : 岩波書店
- 発行年月 : 2013年12月18日
- 本体価格 : 本体3,000円+税
目 次 |
はじめに-東アジアの中の仏典 第一章 漢訳という世界へのいざない-インド、そして中国へ 第二章 翻訳に従事した人たち-訳経のおおまかな歴史 第三章 訳はこうして作られた-漢訳作成の具体的方法と役割分担 第四章 外国僧の語学力と、鳩摩羅什・玄奘の翻訳論 第五章 偽作経典の出現 第六章 翻訳と偽作のあいだ-経典を“編輯”する 第七章 漢訳が中国語にもたらしたもの 第八章 根源的だからこそ訳せないもの 第九章 仏典漢訳史の意義 参考文献 年表 あとがき 索引 |
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本書は仏典の漢訳、すなわち仏教聖典をインドの言語から中国語に翻訳する営みについて、多角的に解説したもの。漢文仏典や中国仏教史の概説書は数多あるが、「翻訳」という視点から文化移入の歴史と実態を明かし、しかも「専門外の読者にもわかりやすく解説した、初めての本」(帯文)である。著者は『高僧伝』(岩波文庫)の訳注等で知られる船山徹教授(京都大学人文科学研究所)。「仏典」とは何か、「訳す」とはどういうことかという点から説き起こす。仏典漢訳とは、中国になかった概念を中国語で表現することでもあった。その葛藤と挑戦を実例で詳らかにしながら、中国独自の仏教受容や文字文化に触れつつ、仏典の漢訳とはいかなる営みであったかを論ずる。
一貫して丁寧で読みやすく、飽きさせない文章ながら、著者の広汎な言語・思想の知識、仏教学研究の最新成果、欧米の翻訳理論が駆使されている。近い将来に仏教初学者の必読書となるのは間違いないが、すでに仏教学や中国学に親しんだ学徒にとっても非常に刺激的な内容である。また東アジアの翻訳理論を見る上で貴重であり、翻訳に携わる全ての人に一読を勧めたい。
評者:日野 慧運(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)
掲載日:2014年3月10日