HOME > 読む! > 仏教書レビュー > 本の紹介

近代化のなかの誕生と死
本の紹介
  • 山田 慎也 (やまだ しんや)
  • 国立歴史民俗博物館 (こくりつれきしみんぞくはくぶつかん)
  • 出版社・取扱者 : 岩田書院
  • 発行年月 : 2013年3月31日
  • 本体価格 : 本体2,400円+税

はしがき(山田 慎也)
新しい民俗展示とフォーラムの目的(小池 淳一)
I 誕生をめぐる民俗
II 死をめぐる民俗
コメント/総合討論(司会:小池 淳一)
民俗展示の新構築シリーズの趣旨(小池 淳一)

本書は2011年に開催された国立歴史民俗博物館のフォーラム「近代化のなかの誕生と死」の報告集である。

近年、誕生と死をめぐる状況が大きな転換期を迎え、社会問題ともなっている。たとえば、誕生に関して言えば、出生前診断や体外受精など、生命工学の進展による生命の操作が行われるようになった。一方、死に関しても、個人化が進む社会のなかで、孤独死や、葬儀・墓地をどうするかといった様々な問題が存在する。

報告者のひとり、山田慎也氏は「葬儀の変化と死のイメージ」と題して、葬送儀礼の形骸化の要因を述べている。地域社会の変容など社会的な要因だけでなく、臨終の医療化や、儀礼の効率化など様々な要因によって、死者への接触が断片的になり、死のリアリティを獲得することが困難になっていったためであるという。

葬儀をはじめとする、変動の激しい現代の諸問題に対して、ともすれば直接的、短絡的な視点で物事を考えてしまいがちである。しかし本書は、長期的スパンで、民族、医療、社会的問題など様々な立場から複合的に見ていく手がかりとなるであろう。


評者:加茂 順成(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2014年3月10日