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讃題の例と解説 / 解説15

不思議の仏智を信ずるを 報土の因としたまへり

信心の正因うることは かたきがなかになほかたし

(正像末和讃、註釈版608頁)

現代語訳

思いはかることのできない阿弥陀仏の智慧を信じることを、真実の浄土に生れる正しい因とされている。この信心という正しい因を得ることは、難しいことの中でも特に難しい。

(『三帖和讃(現代語版)』157頁)

全体の味わい

如来の救いのはたらきの根源である智慧は、私達の思慮分別を超えています。この如来の智慧を信じる信心こそ、報土往生の正しき因種(たね)に他なりません。

ところが私達は自身のはからいから、世間的な道理を超えている如来の智慧をそのまま信じることが難しいのです。この様な私達のはからいの心を誡め、まことに獲難い信心をいただく身に育て上げてくださったのは、如来の本願のはたらきです

間違いなく真実報土へ往生し、仏と成らせていただく人生を、いま歩んでいることをよろこばせていただきましょう。

み教えのポイント

信心の正因(不思議の仏智を信じる)

  • ・阿弥陀如来の本願は、本来、悟りにいたることの出来ない凡夫を、信心一つで悟りにいたらせようとする願いである。この本願は、人間の常識やはからいを超えている。この不可思議の本願を疑いなく信じるこころこそ、浄土へ往生する正しき因である。
  • ・私達は信心を恵まれたその時、如来の光明のなかに摂め取られ、往生成仏する身に定まる。煩悩具足の凡夫のまま、仏となることに正しく決定せしめられることこそ、浄土真宗の救いである。

真実報土・方便化土の世界

  • ・阿弥陀如来の浄土は光明無量・寿命無量という無量の功徳によって荘厳された、真実報土の悟りの世界である。
  • ・反対に親鸞聖人は仏智を疑う者は、辺地・懈慢といわれる方便化土へ往生するといわれ、厳しく誡められている。それは『正像末和讃』に「仏智不思議をうたがひて 善本徳本たのむひと 辺地懈慢にうまるれば 大慈大悲はえざりけり」(註釈版612頁)と示されている通りである
  • ・方便化土は自身の力をたよりとし、自らのはからいの殻に閉じこもる者が往生する世界である。

難信の法

  • ・「難信の法」については、当HP「讃題の例と解説」・「浄土三部経」の項にも解説がありますので、ご参照ください。

法話作成のヒント

信心が仏智であることを語る

  • ・私達はまことの道理に暗く、真実の智慧を持ち合わせてはおりません。
  • ・真実の智慧を持ちえない私達を救おうと、如来はその智慧を信心として私達にほどこしてくださいました。
  • ・私達が信心を賜って真実報土へ往生し、仏と成らせていただけるのも、信心が如来の智慧を本質としているからです。
  • ・迷いの世界に生きる私達は如来の智慧に導かれながら、仏の悟りを開く真実報土へ生まれ往く人生を歩むのです。

信心を恵まれた人生をよろこぶ

  • ・信心を恵まれることは、私が往生成仏させていただく身に定まることです。
  • ・私達の人生は不安に満ちています。しかし信心を恵まれることによって、確かな依り所をいただき、安心して歩むことの出来る人生へと変えられます。
  • ・間違いなく浄土へ往生し、仏と成らせていただくという、本当の安心の中に生き抜く人生をよろこばせていただきましょう。

語釈

  1. 報土の因
    真実報土に往生する正しき因。
  2. 報土
    因位の菩薩の願行に報い現れた報身仏の浄土。阿弥陀仏の浄土は煩悩が完全に滅した悟りの世界であるから、生まれるとただちに成仏する。
  3. 信心の正因
    信心こそが浄土往生の正しき因であること。
  4. かたきがなかになほかたし
    難しいことの中でも更に難しい。「これ以上の難しさはない」という意。

出拠とその解説

  • ・『仏説無量寿経』には、「もしこの経を聞きて信楽受持することは、難のなかの難、これに過ぎたる難はなけん」(註釈版82頁)と説かれています。