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讃題の例と解説 / 解説13

なんぢよくこの語を持て。この語を持てといふは、すなはちこれ無量寿仏の名を持てとなり。

(観無量寿経、註釈版117頁)

現代語訳

そなたはこのことをしっかりと心にとどめるがよい。このことを心にとどめよというのは、すなわち無量寿仏の名を心にとどめよということである。

(『浄土三部経(現代語版)』214頁)

全体の味わい

『観経』には、浄土往生の行業が十六通りにわたって克明に説かれ、一見、その中心は観察行のように見えます。しかし、説法の最後に、釈尊が阿難に対して「無量寿仏の名を持て」といわれたことから、釈尊の本意は、称名念仏を勧めることにあったと言えるのです。

み教えのポイント

観察から称名へ

  • ・『観経』では、韋提希が釈尊に対して、浄土を観察する方法を教えてほしいと要請したことに対して、定善・散善といった観察の方法が説かれる。
  • ・称名念仏は、下品下生の往生が説かれる箇所で示される。(註釈版p.115.116)
  • ・説法の最後で経の肝要を付属するときに、釈尊は阿難に対して、これまで説いてきた観察の行をさしおいて「無量寿仏の名を持て」と称名念仏を付属された。

他力の称名念仏

  • ・「名を持て」と示された称名念仏とは、まさしく『大経』第十八願に誓われた、仏の本意にかなう他力の念仏のことである。

法話作成のヒント

「名を持て」について語る

  • ・阿弥陀仏は、南無阿弥陀仏の名号に私たちが往生成仏に必要なあらゆる功徳を具えてくださっています。よって、その名号を称える念仏は、他の行よりも勝れているのです。
  • ・阿弥陀仏は一切衆生を平等に救おうとされ、念仏を選びとり、勧められるのです。

凡夫の救い

  • ・第十八願には、救われる可能性を持たない下品の悪人を救うために、他力の念仏による往生が誓われています。一切衆生を救おうとされた阿弥陀仏の慈悲を味わいましょう。
  • ・『観経』では説法の最後に「無量寿仏の名を持て」と、定善・散善を行ずることができない韋提希に対して、定善・散善を廃し、念仏の行を勧められるのです。
  • ・「無量寿仏の名を持て」と言われたのは、弥陀の名号を、はるかに後世の者にまで伝えようとされたからです。これまで韋提希に対して説かれた教えが、凡夫である私に対してのものであったと味わうことができます。

語釈

  1. 定善
    散善に対する語。雑念を払い心を凝らして如来、浄土を観察する行のこと。
  2. 散善
    定善に対する語。散乱した心(散心)のままで、悪を止め善を修める行のこと。

補足

善導・法然の念観廃立
  • ・善導大師は、『観経』には「観仏三昧」と「念仏三昧」の2つの法義が説かれていると見られた。(註釈版七祖篇305頁)
  • ・善導大師は「上来定散両門の益を説くといへども、仏の本願に望むるに、意、衆生をして一向にもつぱら弥陀仏の名を称せしむるにあり」(註釈版七祖篇500頁)と、『観経』には定善・散善の利益が説かれるけれども、仏の本願よりうかがえば、称名念仏こそがこの経典の肝要であるとされた。
  • ・法然聖人は定善・散善といった自力諸行を廃し、他力念仏の一行を立てられた。
  • ・善導大師と法然聖人は、「無量寿仏の名を持て」とのお示しを称名念仏として領解された。
親鸞聖人の隠顕
  • ・親鸞聖人は、この廃立の釈意を受けて、「隠顕(顕彰隠密)」の釈を施され、『観経』には、表面に説かれた自力の教え(顕)と、根底に流れる他力の教え(隠)があると見られた。(註釈版381頁~)