ここでは伝道活動に関する工夫やアイディアについて、とくに寺院での法座活動を中心としてご紹介します。
法座で浄土真宗の教えを聴聞しても、自らの現実の具体的な悩みに、向きあうものになっていないことはありませんか?
一方通行になっていませんか?
このような問題を克服するため「話し合い法座」をおすすめします。
「話し合い法座」とは
従来の法座のありようが、一方通行の法座でありがちであったこと。すなわち一人ひとりの門信徒の問い、現実の具体的な悩み、悲しみに向きあうものになっていなかったこと。
門信徒は、僧侶から教化を受ける側、聞く側と位置づけられ、僧侶は、教化者として門信徒にみ教えを説き、聞かせることが使命であると位置づけられ、相互に、双務的にかかえる悩みや課題を隔ててきたこと。また形式的な寺檀関係に依存してきたこと。
このようなありようの転換が門信徒会運動における「話し合い法座」として提唱されてきました。
講義形式の一方通行の法座、あなたの問いに答える方式、「僧侶が話し、門徒は聞くだけ」というあり方を克服して、「話し合い」を中心とした法座が「話し合い法座」です。
現実のなかで悩み、悲しむ人びと、僧侶・門信徒の直面しているさまざまな現実に向かいあい、その苦悩や課題をともに語り合って、苦悩を超えて生きる道、課題にともに取り組み、響き合う人のつながりを求められたのが「話し合い法座」です。
それはまさしく仏法聴聞のいとなみです。具体的に言えば、法に自らの人生を聞き、互いに法味を話し合い、有縁の人びとに法を弘めていくことです。
「話し合い法座」の実践ヒント
テーマ
観念的な抽象的な問題より、生活感を伴った具体的な社会の問題などから設定していきたいものです。
1.問題提起
- ・話し合いの導入となります。
- ・結論を導き出すための、何らかの意図的な強制力を伴ったものであったなら、それは問題といえます。作為的なものであってはなりません。
2.話し合い法座
- ・参加者の本音が語り合えるようにリラックスした雰囲気作りが大切です。
- ・一グループ六~七人程度で車座になって行うのが適当です。
- ・司会者、発表者、記録者を決めます。
- ・「自分なりの意見をいうべきである」「意見はたくさん出たほうが良い」「違った意見がでるのを歓迎するべきである」と思って、活発な話し合いを進めます。
- ・単なる意見交換、議論の場ではありません。
あくまで「法座活動」であり、仏法に人生を聞き開く場です。 - ・共有・共感・受容を大切にしましょう。
- ・話し方・聞き方にも配慮しましょう。
- ・目的をはっきりさせる
- ・人の話に耳を傾ける
- ・長話はしない
- ・発言者が偏らない
- ・少数意見も尊重する
- ・大切なことは発言者に対する共感です
- ・今までの発言を確認する
3.グループ発表
- ・話し合いでの主たる意見、特徴的な意見、共有したい話題等を発表します。
- ・問いの羅列でも立派な発表です。
- ・話し合いのなかで語られた喜びや悲しみ、暖かい話やつらかった話も紹介するように心がけると聞き手がわかりやすくなります。
- ・明るく大きな声で、ゆっくり分かりやすい言葉で発表します。
- ・なるべく発言者の言葉をそのままいかして用いるようにします。
- ・与えられた時間内に終われるように要点をまとめます。
4.質疑応答
- ・納得のいかないこと、確認したいことを講師に質問します。
- ・疑問が晴れることもあれば、逆に心にわだかまりが残る場合もあるかもしれません。しかしながら、人生の問いの答えを短絡的に求めたりはしません。
5.まとめの法話
- ・話し合いの流れを確認します。
- ・問題のひとつひとつを、講師がみ教えに沿って方向づけていきます。
- ・問題提起・話し合い・まとめの法話がすべて一本の糸でつながっていることが大切です。
- ・教義・教学上のおさえを聖典に聴く場合、『註釈版聖典』の頁を開き、共にお言葉にふれていきましょう。
- ・現実問題の諸問題に関わっていく基本的な方向を『聖典』によって確かめることは、きわめて大切なことです。
- ・詳細については『話し合い法座』(本願寺出版社)を参照ください。