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信長と石山合戦 中世の信仰と一揆
本の紹介
  • 神田 千里 (かんだ ちさと)
  • 出版社・取扱者 : 吉川弘文館
  • 発行年月 : 2008年5月20日
  • 本体価格 : 本体2,000円+税

一向一揆は解体したか
一向一揆の背景
門徒の蜂起
大坂籠城
王法と仏教
あとがき
石山合戦年表
参考文献
『信長と石山合戦』を語る(神田 千里)

著者は東洋大学文学部教授(日本中世史)。本書は、1995年に吉川弘文館より刊行された初版に「『信長と石山合戦』を語る」という項目を新たに加え、復刊したものである。

一向一揆は、本願寺を母体とした反体制的な宗教一揆であり、織田信長と対決して滅亡したとされるのが通説である。しかし著者は、その後の本願寺と信長の良好な関係を伝える史料や、諸大名が本願寺の軍事力を利用しようとした記録をもとに、「通説は、実は壮大な神話なのではないか」(250ページ)と推測する。本書はこうした著者の視点により、一向一揆像への全面的な見直しを提起したものである。

著者は、本当に一向一揆は解体したのかという問題を提示することから始めている。そして、本願寺は信長と和睦して大坂から退去したが、各地には一揆を発動できる門徒集団が存在していたことを指摘する。また、本願寺はそれまで諸大名から警戒される存在だったが、信長との和睦によって教団の安定的な地位が保証されることとなり、「本願寺教団が最大の宗派となる、という近世の事態はここから始まるように思われる」(231ページ)と述べている。


評者:伊東 昌彦(教学伝道研究センター研究助手)


掲載日:2008年9月10日