- 出版社・取扱者 : 吉川弘文館
- 発行年月 : 2010年9月15日
- 本体価格 : 本体2,400円+税
目 次 |
はしがき 第一 中世仏教への道 第二 専修念仏の成立 第三 改革運動の展開 第四 中世後期における国家と仏教 第五 中世仏教の終焉 『日本中世の国家と仏教』を語る |
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著者は、東北大学教授(日本中世思想)。本書はもともと、1987年に「中世史研究叢書」の一冊として刊行されたものであり、今回、「『日本中世の国家と仏教』を語る」というあとがきを付して復刊された。
中世(平安末~室町期)の思想といえば従来、鎌倉新仏教がその代表として扱われてきた。しかし研究の進展により「顕密体制論」(中世においても南都六宗および天台・真言の「旧仏教」が正統であり、国家権力と密着した体制が形成されていたとする論)が提唱され、従来の認識が覆されたと言ってよい状況にある。
本書は、この「顕密体制論」を踏まえて新たな鎌倉新仏教論を構築しようとした意欲的な一冊であり、特に「国家と宗教」の関係を視野に入れつつ、新仏教が民衆にどのように受容されたかの解明に力を注いでいる。やや難解なところもあるが、著者は豊富な史料を用いて、中世の精神世界像を生き生きとした魅力をもって描きだしている。
評者:日野 慧運(教学伝道研究センター研究助手)
掲載日:2010年12月10日