- 出版社・取扱者 : 講談社(講談社学術文庫)
- 発行年月 : 2009年5月11日
- 本体価格 : 本体880円+税
目 次 |
第一章 チベットと私 第二章 ラマ僧生活 第三章 印象に残ったチベット人 第四章 霊地巡礼の思い出 第五章 太陽を目指す民族の移動 第六章 チベットの風習 第七章 古いインドにつながるチベットの仏教 解説(山口 瑞鳳) 多田等観略年譜 地図 |
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近年、チベットへの関心が高まるなか、河口慧海をはじめ20世紀初頭にチベットへ入った日本人が再び脚光を浴びているが、そのなかでも多田等観は、チベット滞在が11年にも及んだ人物としてひときわ注目される。本書は、多田が晩年に語ったチベットでの滞在経験を編者の牧野文子が聞き書きとしてまとめたものである(原本は1984年刊)。
その内容は、きわめて興味深い決死のチベット潜入行にはじまり、ダライ・ラマ13世から破格の厚遇を受けての僧院生活、チベット仏教の歴史や概要、さらには、チベット文化、チベット人の生活習慣など多岐にわたっている。また、多田のチベット行に大きな影響を与えた西本願寺の当時の状況にも話題が及んでいる。
巻末の解説は、多田の教え子でもある山口瑞鳳・東京大学名誉教授が当時のチベットの状況や本書の内容の補足的な説明を施したものであり、本書の理解を大いに助けてくれる。なお、近年復刊された多田著『チベット』(岩波書店、1942年)や多田明子・山口瑞鳳編『多田等観』(春秋社、2005年)も合わせてお勧めしたい。
評者:石上 和敬(教学伝道研究センター客員研究員、武蔵野大学准教授)
掲載日:2009年10月13日