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誰でもわかる維摩経
本の紹介
  • 菅沼 晃 (すがぬま あきら)
  • 出版社・取扱者 : 大法輪閣
  • 発行年月 : 2011年6月10日
  • 本体価格 : 本体1,900円+税

まえがき
第一部 『維摩経』を読むまえに
第二部 新訳『維摩経』の世界
第三部 『維摩経』からのメッセージ

著者は東洋大学元学長で、専門はインド学、仏教学、サンスクリット語。

『維摩(ゆいま)経』は大乗仏教のポピュラーな経典の一つであり、漢訳は3種類が現存し、チベット語訳の存在も早くから知られている。原典となるサンスクリット語写本は永らく未発見であったが、1999年に大正大学のプロジェクトチームによって、チベットのポタラ宮殿でその完本が発見された。本書は『維摩経』のサンスクリット本をもとにした現代語訳である。

たいてい、仏教の経典では釈尊(ブッダ)が主人公として教えを説いている。しかし『維摩経』では、在俗者である維摩居士が主人公となって、仏弟子に対して「空」の意味やその実践を説いている。大乗仏教の空思想の原理は『般若経』に説かれるが、『維摩経』は「空にもとづく日常生活」を明かした「般若経の実践編」と言える(16〜17ページ)。本書は『維摩経』の平易な訳であり、書名のとおり、入門編として最適である。


評者:伊東 昌彦(教学伝道研究センター研究助手)


掲載日:2012年01月10日