- 出版社・取扱者 : ポット出版
- 発行年月 : 2011年6月22日
- 本体価格 : 本体3,800円+税
目 次 |
序 第一部 青雲編 第二部 雌伏編 第三部 雄飛編 第四部 回想編 |
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本書は戦前の仏教界に大きな足跡を残した渡辺海旭(1872〜1933)の生涯を描く、物語風の伝記である。海旭はドイツ留学10年を経験した当時一級の仏教文献学者であるだけでなく、浄土宗の一住職として宗門の要職を歴任し、仏教精神に基づく社会事業家(「社会事業」は海旭の造語)の先駆けとして大きな功績を残すなど、多方面で活躍した仏教者である。仏教学者・高楠順次郎に請われて「大正新脩大蔵経」編纂の実務面の責任者となり、世紀の大事業を完遂したことも特筆に値しよう。
一般家庭から仏門に入った海旭が、その才能を認められて海外留学を許され、その後、宗門及び仏教界で重用されていく生涯は、世襲が一般的となった現今の仏教界では新鮮に映る。最後に、海旭の好んだ教育理念「遵法自治」を著者が説明するくだりを挙げておく。「自分で行なうべきことを知り、やるべきことはやり、やってはいけないことはしない、そんな自助自発の人間をつくるというものである」(298ページ)。
評者:石上 和敬(教学伝道研究センター客員研究員、武蔵野大学准教授)
掲載日:2011年11月10日