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金子みすゞがうたう心のふるさと
本の紹介
  • 上山 大峻 (うえやま だいしゅん)
  • 出版社・取扱者 : 自照社出版
  • 発行年月 : 2011年3月31日
  • 本体価格 : 本体1,000円+税

金子みすゞとの出遇い
仙崎というところ
みんな命は愛しい
相手の身になって
みんな関係しあってる
見えぬけれども、あるんだよ
仏さまはさびしいの
みんなちがって、みんないい
いい子になれないみすゞ
仏さまの世界へ
心の豊かな子に育てたい
遺された詩集
言葉がつないだ母子のきずな
還ってきた金子みすゞ
金子みすゞ資料
あとがき

金子みすゞの詩は、テレビCMなど取り上げられることが多く、なじみ深い。彼女の詩には、いのちへの愛しみと哀しみが表され、多くの人に感動を与えている。

本書の著者、上山大峻・龍谷大学元学長は、金子みすゞの故郷、仙崎(山口県)にある浄土真宗の寺の住職でもある。本書は「僧侶(浄土真宗)として、また、同じ地域に育ったものとして、できるだけ彼女の心に近づいてみたい」(10ページ)との思いから著された一冊である。

本書は、金子みすゞの詩31篇を紹介しながら話を進めるが、そこで指摘されているのは、金子みすゞの詩の根源には浄土真宗の教えがあることである。金子みすゞの生家は浄土真宗の門徒であり(9ページ)、著者は「彼女の詩篇には『仏さまの心』が宿っている」(128ページ)と言う。そこで本書は、金子みすゞの詩の魅力を、さまざまな仏典を引き、また仙崎の精神風土に触れながら、やさしく解きほぐしていく。


評者:網代 豊和(教学伝道研究センター研究助手)


掲載日:2011年11月10日