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2022年度一緒に学ぼう 第9回「正信偈」⑨ 講座の内容

「一緒に学ぼう 西本願寺のおつとめ」は、聖典に説かれている内容を学び、一緒に声を出して唱え方を学ぶ講座です。  
今年度は、「正信偈」を中心に学びます。講座は「座学」と「実践」の二部に分かれ、前半の「座学」の時間は、総合研究所の研究職員が、「正信偈」に説かれている教えの内容について解説し、後半の「実践」の時間は、おつとめを指導する専門講師が、合掌礼拝などの作法や「正信偈」のとなえ方についてやさしくお伝えします。

第9回『新制 御本典作法』「正信偈」第一種(和讃譜)①

日時 2023(令和5)年2月7日(火) 10:00~11:30
会場 Zoom(オンライン開催)
講師 座学 田中  真(総合研究所上級研究員)
実践 阿満慎照(本願寺式務部知堂)
人数 39名

当日の内容

【前回の質問】

座学の前に、前回いただいた質問について回答させていただきました。

Q. ハカセの漢字と意味について

A. ハカセは声明に用いる場合は「墨譜」と書く。経文の文字の傍らに示し音の高低、長短を線で視覚的に示すものです。

【座学の内容】

第9回目の座学では『正信偈和讃』の中、六首引和讃の前三首について学びました。

1.和讃とは?

 はじめに「和讃」とは何かについて学びました。和讃とは「和語讃嘆」のことで、「やわらげ、ほめ」(国宝本浄土和讃「現世利益和讃」左訓)と親鸞聖人が お示しになられています。これは漢文の経文を「漢語讃嘆」と呼ぶのに対するものです。すなわち、漢文で書かれた経文(『無量寿経』や『観無量寿経』)などを和文で「やわらげて」讃嘆されたうたということができます。
 また、この和讃は今様という形式をとっています。今様とは平安後期から鎌倉にかけて流行したうたの形式で七五調から成っております。例えば「みだじょうぶつの(七) このかたは(五)」のように七文字、五文字で構成された形式ということです。
 今日『日常勤行聖典』でおとなえしている和讃の製作者は親鸞聖人です。親鸞聖人は生涯で多くの和讃を残されており、現存するものだけでも数えると542首にのぼります。親鸞聖人が和讃のご製作に身血を注がれていたであろうことは想像に難くありません。

2.六首引和讃の共通点

 次に、今回・次回で学ぶ「六首引和讃」の共通点について確認しますと、

①曇鸞大師『讃阿弥陀仏偈』から作られている。
『讃阿弥陀仏偈』は阿弥陀さまとその浄土のありさまを『大経』によって讃嘆された漢文のうたです。これを我われにも分かりやすく「やわらげ、ほめ」ていただいたものが、今の六首引和讃(『浄土和讃』「讃弥陀偈讃」)となります。

②十二光仏の名前を解釈されている。
今の和讃は『正信偈』にある「普放無量無辺光~超日月光」(『日常勤行聖典』8~9頁)までとも対応します。十二光とは、阿弥陀さまの光のお徳を十二通りに喩えたもので、一首目は「阿弥陀さまの成仏」を讃嘆し、二首目は「無量光」を、そして三首目は「無辺光」を讃嘆されています。

③阿弥陀さまの光明による救いを讃嘆されている。
阿弥陀さまの救いのお徳を讃嘆されると同時に、親鸞聖人はその光によって救われるのは一切衆生であること、つまりあらゆるいのちを救うという阿弥陀さまのお慈悲も讃嘆されています。
以下で、詳しくみていきましょう。

3.第一首目「弥陀成仏のこのかたは~」(『日常勤行聖典』38頁)

 阿弥陀さまがどのようにして仏さまになられたのか(弥陀因果)が『大経』にと説かれていますが、第一首は、その箇所についての要点を抜粋されたものです。

 阿弥陀さまは仏さまになられてから、釈尊によって「いま」法が説かれるまでに十劫という長い時間が経過しています。十劫については『正信偈』依経段で学んだ通りです。「今に」とあるのは、「今の」私を往生させるためです。

・「法身の光輪~」では阿弥陀さまの光明が無量であることを讃嘆されている。

4.第二首目「智慧の光明はかりなし~」(同39頁)

 ここでも阿弥陀仏の光が果てしないということを智慧の光として讃嘆されています。

 阿弥陀さまの光が果てしないからこそ、あらゆるいのちが照らされるのであり、この光にわれわれはただおまかせするしかありません。ですから最後に親鸞聖人は「帰命せよ」とお示しくださいます。

5.第三首目「解脱の光輪きはもなし~」(同41頁)

 「光輪」というのは、阿弥陀さまの光を車輪に喩えたものです。自由自在に際限なくあらゆるいのちを救う阿弥陀さまお光のはてしなさをいま、「光輪」讃嘆されています。

 次に、阿弥陀さまの光をいただくことにより有無を離れることができることが示されます。我われの世界ではものごとを「有る」「無い」で判断いたしますが、そのような「有る」「無い」を超えた世界、つまりはお浄土というさとりの世界へと阿弥陀さまがお導きくださる、そのようなはたらきがあるのが阿弥陀さまの光であることが示されます。

 以上のことを、座学の時間で学びました。

【実践の内容】

 第9回目の実践の時間では、「新制 御本典作法」より「正信偈」第一種(和讃譜)のとなえ方について学びました。和讃譜とは、天台宗の大原魚山声明を基に新しくできた節です。初めて聞いたという受講者の方も多かったのではないでしょうか。以下に要点を示したいと思います。なお、文中に( )で出される算用数字は、『新制 御本典作法』(本願寺出版社)のページ数を表しています。

1.音の移り変わりと諸注意点

 経本『新制 御本典作法』を閲くと、難しそうな墨譜が「正信偈」の左側に付されているが、これが和讃譜の墨譜となる。しかし、発声する音としては、

角 (ラ)   黄鐘

商 (ファ#) 下無

宮 (ミ)   平調

羽 (ド#)  上無

微 (シ)   盤渉

の五音のみ。「ラ」からのペンタトニックの音階とも解釈できる。

 ・頭から「善導独明仏正意」(25)までは漢字一字につき一拍のテンポでとなえる。これは、魚山声明の節を一拍に省略したものになります。

 ・節は四句で1セットでこれを繰り返す。四句を覚えれば以下は同じ。

 ・鼻音は使わない。

2.「帰命無量寿如来~至安養界証妙果」(14~25)

 ・出音は「ミ」の音。

 ・「帰命無量寿如来~在世自在王仏所」までの節を繰り返します。

 ・「証妙果」(25)の左に「ユルク」とある。徐々にテンポを落とす。一字一拍のテンポ感を一字二拍にするイメージ。草譜や行譜と異なり、そのまま一旦切らずに次の「善導~」に続く。

3.「善導独名仏正意~唯可信斯高僧説」(25~28)

 ・ここからの墨譜はかなり難しそうに見える。墨譜を見るより、聞いて覚えると分かりやすいかと思う。

 ・ここから一字二拍となる。二字仮名は後ろ0.5拍でつけるが例外もある。

 ・「光明名号顕因縁」(25)の「光(コウ)」と「顕(ケン)」ついては二字仮名を二拍ずつ取るので注意。行譜の「矜哀」と同じ拍の取り方と覚える。

以上のことを実践の時間では学びました。

 今回は、新たな節ということもあり、和讃譜全体をとなえることに重点をおいて実践していただきました。次回は、今回出たご質問など合わせてもう一度和讃譜の唱え方を学んでいきたいと思います。

 今年度最終回でございますので、ぜひご参加ください。

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