- 出版社・取扱者 : 慶応義塾大学出版会
- 発行年月 : 2010年4月15日
- 本体価格 : 本体3,600円+税
目 次 |
序文 アジアを「体験」した仏教者たち−その思想と行動の軌跡(小川原 正道) 1 島地黙雷−インド体験と布教活動(小山 聡子) 2 松本白華−欧州・中国を見た人の沈黙(町泉 寿郎) 3 小栗栖香頂−中国体験と日本仏教の再発見(陳 継東) 4 北方心泉−中国体験と書の受容について(川邉 雄大) 5 南条文雄−そのインド体験の宗教的・思想的意義(小川原 正道) 6 釈宗演−その<<インド>>体験(山口 輝臣) 7 井上円了−教育に生き教育に死す(高山 秀嗣) 8 河口慧海−求法の道の終着点(桐原 健真) 9 三島海雲−仏教・美術・社会貢献(塩瀬 隆之・高山 秀嗣) 10 堀至徳−二〇世紀初頭のインド熱(中島 岳志) 11 高楠順次郎−その思想形成におけるインド・ネパール体験(小川原 正道) 12 藤井日達−「西天<インド>開教」の体験(ランジャナ・ムコパディヤーヤ) 人名索引 著者紹介 |
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本書は、明治から昭和初期にかけてインドや中国などのアジア諸国を「体験」した日本人仏教者12名について、その「体験」の意味を考え、また、その「体験」が彼らの思想や生き方にどのような影響を及ぼしたのかを考察した論集である。12名の訪問地、訪問時期、訪問目的などは多岐にわたっており、一律には論じ得ない部分も多いけれども、いずれのアジア「体験」も、明治維新を迎え、国内的には廃仏毀釈により傷つき、また海外からは西洋文明とりわけキリスト教が圧倒的な影響力をもって流入するという、伝統仏教にとっては苦難の時代のなかのアジア「体験」であったという共通項は見いだせるであろう。
欧米へのキャッチアップが喫緊の課題であった近代日本において、仏教者たちが、仏教の故地であり、また、仏教伝来の恩人でもあり、その意味では自らの信仰のアイデンティティーの一部分とも言えるアジア諸国を、どのように捉え、そのアジア「体験」から何を学び得たのか、いずれも興味の尽きない12編の論考である。
評者:石上 和敬(教学伝道研究センター客員研究員、武蔵野大学准教授)
掲載日:2010年10月12日