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生と死のことば 中国の名言を読む
本の紹介
  • 川合 康三 (かわい こうぞう)
  • 出版社・取扱者 : 岩波書店(岩波新書)
  • 発行年月 : 2017年10月20日
  • 本体価格 : 本体780円+税

一 生とは何か、死とは何か
二 生は仮の宿り、死は永遠の帰着
三 生ははかない
四 死を前にして
五 生への執着
六 死は必然
七 死への恐れ、死への憤り
八 亡き人を悼む
九 不死の希求
十 死を恐れる陶淵明
十一 死を戯画化する陶淵明
十二 死を乗り越える
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本書は、中国古典文学を専門とする著者が、孔子・荘子・曹操・陶淵明などの中国の先哲や文人たちが残した生と死に関することばを紹介しながら、彼らが生と死について何を思ったのか、その思いを解説するものである。

本書では、60を越える生と死に関する中国古典のことばが取りあげられている。死を前にして平凡だった日々をなつかしむ『史記』「李斯伝」のことば、寒花という召使いの少女の死を悼む文章である「寒花葬誌」など、味わい深く印象に残ることばが多く紹介されている。その中でもとくに評者が心を引かれた、劉希夷「白頭を悲しむ翁に変わる」という詩を以下に引用してみる。
  年年歳歳 花 相似たり、歳歳年年 人 同じからず。
  年年歳歳花相似、歳歳年年人不同。
  来る年も来る年も、花は同じように咲く。
  しかし来る年も来る年も、人が同じでいることはない。(32ページ)

このように本書では、中国古典の名言が、訓読・原文・翻訳と示されているので、中国古典に対する苦手意識を持っている人でも読みやすいものとなっている。著者である川合氏が「生とは何か、死とは何か、人びとはずっとこの問題を考え続けてきました」と述べている通り、生と死の問題は国や時代を問わず常に問題とされてきており、現代のわたしたちにとっても重要な関心事項であり続けている。本書は、このような点に関心を抱く現代の私たちにも重要な示唆を与えてくれるように思える。


評者:小野嶋 祥雄(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2018年6月11日