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加藤辨三郎と仏教 科学と経営のバックボーン
本の紹介
  • 児玉 識 (こだま しき)
  • 出版社・取扱者 : 法蔵館
  • 発行年月 : 2014年8月20日
  • 本体価格 : 本体1,800円+税

まえがき
はじめに
I 略歴
II 仏縁開花
III 「自信教人信」の生活に
IV 仏教観
V 経営理念と実践活動
VI 仏教学習
おわりに
引用文献一覧

本書は協和発酵工業(現、協和発酵キリン)の創業者であり、在家仏教会(現、在家仏教協会)の創立者でもある、加藤辨三郎(1899~1983)の、仏教との関わりを中心とした評伝である。ただし、著者もことわるように、「論評は極力抑え、加藤本人の文章をなるべく多く掲げる」という方針が貫かれており、随所に加藤の肉声が蘇ってくるような温かみのある一冊となっている。著者は、元龍谷大学教授で日本仏教史の研究者である。

本書の内容は、加藤の略歴の紹介、特に加藤と仏教との出会いや、在家仏教会の設立に詳しく触れ、さらには、念仏信仰を中心とした加藤の仏教観、加えて、会社経営と仏教とのかかわりなど、多彩な内容が盛り込まれており、加藤を知るための好適な入門書である。著者が選りすぐった加藤の言葉はいずれも胸を打つものばかりである。加藤は、自分には立派なことは何もできないと言って、自分の責任を回避するような「卑下慢」を知ったことが、念仏へ誘われた第一歩だとしている。また、絶対に自分の考えを他人に押し付けない「柔軟心」を重んじたこと、念仏を中心としながらも禅などにも造詣の深かったこと、「いい時は、これ全部お蔭さま。悪い時は、これ全部自分の責任である」など珠玉の言葉の数々、加藤の仏教観を知るためのエッセンス満載の好著である。

最後に、科学者でもあった加藤が死について語った言葉を紹介しておく。「生物学的死の瞬間から、そこは浄土になるというのが仏教的な死の考え方なのである」。


評者:石上 和敬(武蔵野大学教授、浄土真宗本願寺派総合研究所研究協力者)


掲載日:2014年12月10日