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目 次 |
言葉編 I 人間を見る目 II 信心のすすめ III 「念仏もうす」人生 IV 世間との関わり 生涯編 略年譜 蓮如の生涯 |
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現在の本願寺は、15世紀の戦乱の世を生き抜いた蓮如上人の布教によるところの影響が多大である。浄土真宗の宗祖・親鸞聖人が寺をもたなかったことに対し、蓮如上人は本願寺の長男として生まれ、「初めから本願寺の人間」として生きなければならない環境にあった。本書はこの視点に注目しながら、当時の人びとが蓮如上人を慕い集ってきた、その魅力を上人の願いや生き方を表す言葉より考察したものである。
本書で取り上げた言葉の多くは、『御文章』(『御文』)と『蓮如上人御一代記聞書』からのものである。『御文章』とは、浄土真宗の教えをわかりやすく伝えるため、門徒(浄土真宗の信者)へあてて書いた手紙のことである。『御文章』は各地の寄合で繰り返し拝読・拝聴され、多くの人びとの生きるよりどころになったと考えられる。いまも浄土真宗の寺では、『御文章』を拝読して、蓮如上人が示した浄土真宗の教えの肝要を受け継いでいる。
また、蓮如上人の言行などをまとめた『蓮如上人御一代記聞書』からは、念仏者としての生活の規範を知ることができる。
本書は、「先人の『ことば』を声に出して味わい、その人生を知ることで、私たちの人生を豊かに導く」(同社ウェブサイトより)、「日本人のこころの言葉」シリーズの一冊であり、コンパクトで読みやすい構成となっている。
評者:前田 壽雄(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)
掲載日:2014年12月10日