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般若心経 テクスト・思想・文化
本の紹介
  • 渡辺 章悟 (わたなべ しょうご)
  • 出版社・取扱者 : 大法輪閣
  • 発行年月 : 2009年2月10日
  • 本体価格 : 本体3,000円+税

第一章 『般若心経』は生きている
第二章 『般若心経』の成立とテクスト
第三章 原典から読む『般若心経』
第四章 『般若心経』の展開
第五章 『般若心経』と日本文化
あとがき
付録 大本『般若心経』-サンスクリット校訂本と発音・和訳・解説

本書は、般若経研究の第一人者である渡辺章悟・東洋大教授による、『般若心経』の解説書である。『般若心経』はわずか260余字(玄奘訳)という短い経典であるが、大乗の基底をなす「空」思想を説く浩瀚な般若経の「心髄」であり、わが国でも浄土真宗と日蓮宗以外のすべての仏教宗派で読誦されている。本書はこの『般若心経』の解説の形をとりつつ、著者の般若経系経典、ひいては大乗仏典全般に関する長年の研究成果が大いに披露されている。

本書は著者と『般若心経』の関わりから始まり、そして『般若心経』の成立・翻訳過程、題意、本文の内容、そしてアジア各地における研究や信仰のあり方、文学への影響を、解説していく。「付録」として、サンスクリット原典に発音(カタカナ)・和訳を付したテキストを収録する。

本書は高度に学術的な情報を含みながら、平易な文章で綴られている。『般若心経』には親しんでいるが、もう一歩踏み込んだ知識を得たいという方、また仏教学の初学者にもおすすめしたい一冊である。


評者:日野 慧運(教学伝道研究センター研究助手)


掲載日:2009年6月10日