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迷える者の禅修行 ドイツ人住職が見た日本仏教
本の紹介
  • ネルケ 無方 (ねるけ むほう)
  • 出版社・取扱者 : 新潮社(新潮新書)
  • 発行年月 : 2011年1月20日
  • 本体価格 : 本体740円+税

まえがき
第一章 ドイツで仏教と出会う
第二章 憧れの修行生活
第三章 出家はしたけれど……
第四章 京都てなもんや禅寺修行
第五章 師匠との決別
第六章 ホームレス雲水
第七章 大人の修行
あとがき

著者は、曹洞宗・安泰寺(兵庫県美方郡)住職のネルケ無方氏。本書は、ドイツ生まれの青年が、坐禅に出会い、日本に渡り、日本仏教の現状を目の当たりにして失望を感じながらも、その中に希望を見出し、修行生活に自らを投げ入れてきた様子を描いている。なお、本書には曹洞宗の修行道場、臨済宗の僧堂などにおける修行生活の具体的な内容も、かなり詳細に書かれているため、坐禅修行を志す者にとっての入門書ともなり得る。

著者は当初、「私とは何か?生きる意味とは何か——」(22ページ)といった人生の問題の解決を坐禅に求めていたが、修行生活を送る中で、こうした問いかけをしなくなったという。坐禅によって求める方向性が変わり、「生きる意味」が問題なのではなく「一瞬一瞬、この私自身の生きる態度が問われている」(251ページ)と気づいた著者は、現在、「いつまでも……『迷える者』であり続けたい」(252ページ)と語っている。


評者:鈴木 健太(教学伝道研究センター元研究助手、北海道武蔵女子短期大学専任講師)


掲載日:2011年6月10日