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愚管抄 全現代語訳
本の紹介
  • 大隅 和雄 (おおすみ かずお)
  • 出版社・取扱者 : 講談社(講談社学術文庫)
  • 発行年月 : 2012年5月10日
  • 本体価格 : 本体1,300円+税

凡例
巻第一
巻第二
巻第三
巻第四
巻第五
巻第六
巻第七
補注
学術文庫版へのあとがき

『愚管抄』は平安時代末から鎌倉時代にかけて活躍した天台僧・慈円(1155〜1225)による歴史書である。慈円は天台座主に4度就いており、また関白・九条兼実の実弟でもある。そして、青蓮院において親鸞聖人が得度する際の師となったことでも知られている。

『愚管抄』は神武天皇以来の日本の歴史を記しているが、単なる事実の列挙ではない。歴史の「道理」を示そうという意図がある(115ページ)のであり、「因果の道理」を理解する人が登用されれば世は治まるが、そうでない人が政務を執れば世は滅びていくと説く(302ページ)。

歴史は誰しも中学や高校で学ぶものであるが、出来事やその流れを追うことが中心になりがちである。本書は、「歴史を学ぶ」とは出来事を知るだけではなく、過去の出来事から何かを学ぼうとすることであるということを教えてくれる。

なお、本書は大隅和雄・東京大学名誉教授による現代語訳「日本の名著9『慈円・北畠親房』」(中央公論社、1971年)の文庫化である。


評者:伊東 昌彦(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2012年10月10日