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ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ
本の紹介
  • ケイレブ・メルビー (けいれぶ・めるびー) 原作
  • ジェス3 (じぇす3) 作画
  • 柳田 由紀子 (やなぎだ ゆきこ)
  • 出版社・取扱者 : 集英社
  • 発行年月 : 2012年2月29日
  • 本体価格 : 本体1,300円+税

ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ
あとがき
乙川(知野)弘文について
原作者ケイレブ・メルビー・インタビュー
ジョブズに捧げる言葉
『ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ』メイキング

アップルコンピュータ創業者のひとり、スティーブ・ジョブズ。その発想の原点は禅にあるという。本書は、スティーブ・ジョブズと禅僧(曹洞宗)・乙川(知野)弘文の30年にわたる交流を描いたアメリカンコミックである。

弘文とジョブズの出会いは1971年、カリフォルニアの禅堂においてである。そこは鈴木俊隆老師が開いた禅堂であり、弘文は鈴木の要請を受けて渡米していた。鈴木は、ジョブズを弘文に引き合わせ、ジョブズに「僧の役割とは、人に取り憑く物質主義から人を解き放つこと」(38ページ)と説いた。その後、ジョブズはたびたび参禅し、弘文に教えを請うた。その影響であろうか、ジョブズは2010年に「常に、テクノロジーとリベラルアーツの交差点でありたいと願っている」(60ページ)と語った。ジョブズが目指したのは単に製品を作ることではなく、製品を手にした人が豊かな体験(精神性)を得ることなのであった。

最近、経典をiPadに入れる僧侶が見受けられる。ジョブズなら何と言うだろうか。


評者:加茂 順成(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2012年10月10日