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聖(セイント)尼さん
本の紹介
  • 露の団姫 (つゆの まるこ)
  • 出版社・取扱者 : 春秋社
  • 発行年月 : 2017年11月20日
  • 本体価格 : 本体1,400円+税

はじめに
教会と延暦寺の鐘が鳴る
 【コラム1】落語と仏教
ダーリンは隠れキリシタン
 【コラム2】お坊さんは結婚してもいいの?
いよいよ結婚!出家!剃髪!
 【コラム3】「愛」と「愛欲」
「あまちゃん」と「クリスチャン」の誕生!
 【コラム4】カトリックとプロテスタント
ふたりの日常
 【コラム5】宗教と食べ物
「主人」ではなく「旦那」
私の修行の場
 【コラム6】発達障害と楽しく暮らす七箇条
汝の隣人を愛せよ?
 【コラム7】日本語の中にはキリスト教用語もいっぱい!?
仏教とキリスト教のハーフが誕生!?
 【コラム8】日本仏教の主な宗派
子育て意奮戦記
 【コラム9】大乗仏教と上座部仏教
法華経=キツイ!?
いろいろな宗教からアノ手コノ手
 【コラム10】「職業病」ならぬ「信仰病」にご注意を!
凸凹夫婦を救った「発達凸凹」
おわりに(大治朗)
おわりに「御大切」(団姫)

著者は天台宗の女性僧侶であり、落語家でもある。夫の豊来家大治朗氏はクリスチャン(プロテスタント)であり、太神楽曲芸師でもある。その2人の出あいと結婚生活をつづった一冊である。

夫婦で信仰が異なると、それが問題の種になりやすいと思う向きも少なくないであろう。ところが著者の家庭では、お互いの信仰を尊重し、相手の宗教からも学ぼうという姿勢があり、信仰が原因でトラブルが起こった様子がない。

それは評者が思うに、お互いに信仰を「家」ではなく「個人」のものとして理解しており、夫婦で信仰が一致することを求めていないからであろう。なお、著者の父方は曹洞宗、母方は日蓮宗、夫の実家は浄土真宗とのこと。つまり、著者が天台宗なのも、夫がプロテスタントなのも、家ではなく個人の道なのである。本書によれば、著者と夫は「息子には息子の信仰の道を自由に歩ませたい」と話しているという。

これまで、「わが家は○○宗(○○教)」のように、信仰を家単位で考えることが広く行われてきた。しかし、著者の家庭のように、「わが家」ではなく「私は○○宗(○○教)」(つまり、夫婦や親子、兄弟でも信仰が異なる)という例は、増えていくと予想される。現在の寺院の運営にはおおむね「家の宗旨が代々続く」という前提があるが、「個人の信仰」にも対応できるようにする必要性を感じさせられる。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2018年2月13日