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聖典読解シリーズ5 正信偈
本の紹介
  • 内藤 知康 (ないとう ともやす)
  • 出版社・取扱者 : 法蔵館
  • 発行年月 : 2017年9月20日
  • 本体価格 : 本体3,800円+税

はじめに
 一、「正信偈」の位置
 二、『教行信証』の諸本
 三、偈前の文
 四、題目の意義
 五、「正信偈」の組織
仏恩の信知を標す
依経段
 一、弥陀章
 二、釈迦章
依釈段
 一、総讃七祖
 二、龍樹章
 三、天親章
 四、曇鸞章
 五、道綽章
 六、善導章
 七、源信章
 八、源空章
 九、総結勧信
あとがき

「正信偈」とは、親鸞聖人が作られた偈文(定型詩)である。浄土真宗においては日常的に称えられており、「帰命無量寿如来」で始まることでなじみ深い。

「正信偈」は親鸞聖人の主著『教行信証』(全6巻)の2巻目「行文類」の末尾に収められている。漢字840字で浄土真宗の教えの要が説かれており、古くから「正信偈がわかれば浄土真宗がわかる」といわれてきた。

本書は、寺院の住職がご門徒から質問を受けたときの参考にできるような「正信偈」の解説書を出版したいとの依頼を出版社より受けて、著されたものである。そのため、専門用語の多用を避け、やむを得ず使用する場合は、平易かつ詳細な解説が付されるなど、読者の理解への配慮がなされているのが特徴である。本書の「あとがき」には、
  解説書という性格からして、筆者自身の味わいはできるだけ表に出ないようにし、
  親鸞聖人が「正信偈」によって何を言い表そうとされたのかを、用いられている
  言葉の学問的な解釈と親鸞聖人の著作全体の俯瞰を通じて明らかにすることに意
  を用いました。(385ページ)
という著者の執筆の姿勢が述べられる。

本書は、「正信偈」一字一句をていねいに読み解き、そこに込められた教えを明らかにした一冊である、と評者には思われる。


評者:東光 直也(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2018年3月12日