- 出版社・取扱者 : 筑摩書房
- 発行年月 : 2015年10月15日
- 本体価格 : 本体1,700円+税
目 次 |
凡例 略号表 はじめに 序章 問題の所在 第一章 仏教理解の基盤 第二章 大乗仏教成立の前提 第三章 主要な大乗経典と仏伝 第四章 法華経と仏伝 終章 大乗仏教、そして大乗経典とは? おわりに 引用文献 |
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出家、在家を問わず誰でも悟りを得ることができると説く大乗仏教。それまで、出家者だけの教えであった仏教は、大乗仏教の出現によって大きく変化し、日本を含む東アジアへと広がっていく。
では、その教えを説く大乗経典は、いかにして誕生したのか。現在も様々な議論が行われる仏教学の大きな問題に、「仏伝」つまり、ブッダの伝記が大きく関与していると指摘するのが本書である。
本書は、2012年に出版された『法華経成立の新解釈』を一般向けに改め、さらに、大乗経典全般を考察の対象に含めて出版された。
前半では基礎的な情報として、近年の大乗仏教研究に関する重要な学説を簡潔に紹介している。なかでも第二章は、仏・法・僧に対する伝統仏教(著者は、いわゆる小乗仏教を「伝統仏教」と呼ぶ)と大乗仏教の立場を分かりやすく示しており、本書を理解するために重要な章である。第三章以降では、文献的証拠を提示しながら、大乗経典が仏伝を意識しながら創作されたと主張し、なにゆえに「仏伝」が大乗経典のベースとなったのかを考察する。
従来、大乗経典成立の研究といえば、思想に関する研究をもとにしたアプローチが主流であった。しかし本書は、大乗経典を包括的に捉え、その構成や、経典を生み出すに至った共通意識に迫っており、仏教学の研究方法に新たな視座をもたらす。
また、あとがきには、本書の執筆中に起こったある出来事が記されている。研究者、特に文献学者と聞くと、堅物なイメージを抱く人も多いだろう。しかし、このあとがきを読むと、著者の温かな人柄と、情熱とユーモアあふれる性格を知ることができる。