- 出版社・取扱者 : 文藝春秋
- 発行年月 : 2015年9月15日
- 本体価格 : 本体1,500円+税
目 次 |
はじめに 第一章 日本人はこうやって死んできた 第二章 <物語る>仏教 第三章 臨終にも行儀作法がある 第四章 <物語り>を取りもどす 終章 帰るところのある人生を生きる あとがき 参考資料 |
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「人は死ぬとどうなるか」。これは恐らく、永遠のテーマであろう。死後を実証的に語ることはできない。それでも人は、死後について追究し続けた。それがさまざまな伝承となり、宗教の教義と密接な関係を保ってきた。
「死ねば全てが無になる」も一つの見方である。しかし、それとは別の考え方が、世界中で取られ続けてきた。すなわち、「死では終わらない物語」が連綿と伝えられてきたのである。
「人は死ぬとどうなるか」、その結論の一つが「浄土に往生する」である。人々がどのようにして往生したか、その伝承をまとめたのが「往生伝」である。本書は、さまざまな往生伝をもとに、死生観を語っていく。
日本では平安時代に、浄土への往生を説く浄土教思想が広まり、それは現在に至るまで、日本における死生観に影響をあたえている。「浄土に往生する」とは、往生して終わるのではない。浄土で仏となり、仏の慈悲をもって人々を救うため、この世に戻ってくることを意味する。
本書で語られる「死では終わらない物語」に、共感することもあれば、違和感を覚えることもあろう。本書でも指摘されているが、一時期、僧侶たちが浄土への往生を語るのに消極的な傾向があった(評者が思うに、理論的な思考が重視され、それ以外の面が軽視される風潮があったためであろう)。だが、「死では終わらない物語」が語り継がれてきたということは、人類が理論とは別の思考において、その物語を求めてきたことを意味する。人の思考は、理論が全てではない。すなわち、「死では終わらない物語」を語ることは、人類の要求に応えることである。そう感じさせる一冊である。