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仏教図像学 インドに仏教美術の起源を探る
本の紹介
  • 田中 公明 (たなか きみあき)
  • 出版社・取扱者 : 春秋社
  • 発行年月 : 2015年8月28日
  • 本体価格 : 本体2,600円+税

はじめに
第1章  仏教図像のあけぼの 仏像不表現の時代
第2章  仏像の誕生 ガンダーラとマトゥラーの仏教図像
第3章  仏伝図と印相の成立
第4章  菩薩像と持物の意味するもの
第5章  天部像 仏教に摂取されたインドの神々
第6章  観音像(1) その成立と信仰
第7章  観音像(2) 変化観音の展開
第8章  力のほとけ 金剛手と忿怒尊の展開
第9章  女性尊 女性の仏菩薩と神々
第10章 他土仏信仰の展開と四方四仏
第11章 三尊像 もっとも単純な群像形式
第12章 パタとタンカ 軸装仏画の源流
第13章 仏教図像の日本的展開
第14章 仏教寺院と尊像配置
第15章 両界曼荼羅の成立と伝播
第16章 別尊曼荼羅の世界
第17章 まとめ 仏教図像とは何か?
あとがき
索引

著者はインド、チベット、ネパールなどの密教や曼荼羅研究などの専門家であり、当該分野に関する著訳書も多く、本書は丁度50冊目の節目の出版にあたるという。なお、本書は慶應義塾大学文学部での講義テキストとする目的で執筆されたものである。

本書のねらいは冒頭でも示されているとおり、「アジア全域にわたる文化交流の歴史を明らかにすること」にある。そこで、仏教美術の源流を知るために、まずインドに着目する。そして、「インドの仏教美術を継承したネパール・チベット・東南アジア」さらには「日本の仏教美術の源流であるシルクロード地域・中国・朝鮮半島の作品」をも考察する。

仏教美術を論ずる書籍は他にもあるが、本書は「日本と関係の深いトピックを重点的に扱う」ことで、「他著との差別化」を図ったと語る。

近年、仏像ブームを背景に仏教美術に関する出版はおびただしい数にのぼり、根拠の乏しい通俗的解釈も横行しているようだが、本書が仏教美術を学問的に正しく理解するための良き導きの書となることは間違いないであろう。


評者:石上 和敬(浄土真宗本願寺派総合研究所研究協力者、武蔵野大学教授)


掲載日:2016年1月12日