- 出版社・取扱者 : 平凡社
- 発行年月 : 2009年5月25日
- 本体価格 : 本体1,400円+税
目 次 |
はじめに-死を愉しく迎えるための人生(五木 寛之) 第1章 覚悟ある生きかた 第2章 理想の死にかた 第3章 最後の時間のすごしかた 第4章 型破り、死の儀式のヒント 第5章 まだ見ぬ「死後の世界」について 第6章 死の壁を超える養生とは 第7章 究極の生命エネルギーの高めかた あとがきにかえて-虚空という、もうひとつの生命(帯津 良一) |
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本書は作家・五木寛之氏と医師・帯津良一氏の対談集である。両氏はこれまでにも対談集『健康問答』(1)(2)を出しており、本書はそれに続く3冊目。帯津氏は西洋医学に中国医学や代替療法を取り入れ、ホリスティック医学の確立を目指している。五木氏は周知のとおり、親鸞聖人に非常に造詣が深いため、仏教一般から親鸞聖人の信仰に至るまでをカヴァーして主として五木氏が話題を提供し、帯津氏と五木氏とで議論を深める形式で対談が進められている。「覚悟ある生きかた」「理想の死にかた」のテーマからはじまり、「死後の世界」などの興味あるテーマをとりあげながら、死を超えること、死は暗くこわいものではないかもしれない、と死を受け入れた人の話などをとりまぜて、「死から見た健康」、「死後の世界を見すえた養生」など、わたしたちがもっとも知りたいが科学では解明できない類の話題に大胆に切り込みながら、両氏の考えが提示されていく。
本気で、本音で語り合われたものなので、両氏の考えは必ずしも一致していないが、それぞれの考えがまたユニークで、それぞれの考えや生きかたが読者にも参考になり、また元気づけられる。
帯津氏は、「生命は永遠に存在しつづけるものと確信してい」ると述べる。そして、ホリスティック医学は身体、心、生命が一体となった「人間をまるごと診る」医学なので、治癒も大事だが、生から死への道のり、死の門をくぐって、死後の世界までも対象とする、と言う。このような立場から、「死後の世界というのは、信じる信じないじゃなくて、かならず来るものとして、覚悟してこれを迎えなきゃならないと思う」と話す。そして、大胆に、「私たちは虚空からやって来て、(中略)また虚空に帰っていくわけですが、虚空からの旅のなかで目減りしたエネルギーを地球上で補給して、そのエネルギーを復路の燃料としてふるさとの虚空に帰っていくのではないか」との考えを示す。
五木氏は「死後の世界」を話題にするなかで、「いま、浄土の魅力がなくなったのは、はっきりした地獄のイメージがないからですよね」と述べ、「じつは現代社会において、地獄が見えないということが、いちばん大きな問題かもしれません」さらには「私たちの生きている、この世自体が、ある種の地獄ではないか」とも指摘する。
しかし、「そのような日々の暮らしのなかに、一瞬、光がさすことがある。それが極楽ではないか」、そして「むかしの人がいう浄土というのは、考えるんじゃなくて、感じていたものだと思うんです。」と言う。
そして、最後は、五木氏の「けっきょく、生命の源に向かって、私たちの生命は歩んでおり、それは、死をこえてつづく長い旅なのでしょう。(中略)一日、一日をたいせつに、ありがとうという感謝の気持ちで生きぬけば、いずれは、その命の源にたどりつけるのではないでしょうか。」という言葉で括られている。