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これからの日本、経済より大切なこと
本の紹介
  • 池上 彰 (いけがみ あきら)
  • ダライ・ラマ法王14世 (だらいらまほうおう14せい)
  • 出版社・取扱者 : 飛鳥新社
  • 発行年月 : 2013年11月14日
  • 本体価格 : 本体1,300円+税

第一章 経済について
第二章 格差について
第三章 お金について
第四章 物質的価値について
第五章 仕事について
第六章 日本について

著者は、フリージャーナリストの池上彰氏とチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ法王14世。

本書は、経済にまつわる問題(概要は目次を参照されたい)をどのように考えていけばよいのか、ダライ・ラマ法王14世の見解と、それを受けた池上氏の想いが伺える一冊である。両者の過去の対談より、内容的な要所をトピック毎に纏め出版されたものと見受けられる。

本書における主張の柱となるものは、経済活動を営む人間の行動原理に「心」の問題があるということである。ダライ・ラマ法王14世は、経済に関する問題の根源に「私たちのあくなき欲望」があると述べ、今後の進むべき方向として、より「内面の充足」「内なる価値を高め」る必要性を説く。池上氏もこれに呼応し、「心に目を向けることで、経済という人の営みへの理解を深めていきたい」と自身の意向を述べ、人の心について目を向ける仏教、特に「ダライ・ラマ法王の説く教えに興味」を深めている、と本書出版の動機とも見受けられる言葉が見て取れる。まさに本書の題名にもある「経済より大切なこと」として意味される部分であろう。

さて、本書の中で池上氏は、自身の幅広い見識を通じ、現在の世界経済の事象や問題などを紹介、また経済学のこれまでの歩みも解説している。それらの中で伺えることは、お金への価値観についての問いであろう。今後の日本がいかなる価値観のもと、経済活動という道を歩んでいくのか検討すべきことかもしれない。最後に池上氏は、今後の日本人がより幸せを感じられるようになるために「足るを知る」必要性を示している。


評者:網代 豊和(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2014年10月10日