- 出版社・取扱者 : 河出書房新社
- 発行年月 : 2013年10月30日
- 本体価格 : 本体1,300円+税
目 次 |
はじめに 第1章 宗教教育の始まり 儒教・仏教と学校 第2章 宗教教育受容史 ミッション・スクールと仏教系・神道系学校 第3章 教育と宗教の衝突 第4章 なぜ新興宗教は学校をつくったのか 第5章 宗教と学校の行方 おわりに 参考文献 |
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私立学校には、宗教系の学校が少なくない。本書は、こういった学校(とくに設立や運営)について語っている。
本書によると、仏教系学校とキリスト教系学校は、そもそも成り立ちが異なる。仏教系学校は僧侶の教育機関を前身とするものが主だが、キリスト教系のそれは布教活動の一環として設立された。キリスト教の学校で教育をすることによって、信者にはならなくても、キリスト教のシンパや理解者が増えて布教をしやすくなるという利点が期待されたのである。
また、本書には僧侶として気がかりなことが書かれている。仏教系女子高の教員が書いた論文(艸香秀昭「宗教教育のもろ刃の効果―武蔵野女子学院の宗教教育の試み」、1998年)によれば、女子の受験生の間で避けたがる学校を指す「3B」という言葉があり、その1つが「仏教」であるという。逆に、憧れのある学校を指す「3K」という言葉もあり、その1つが「キリスト教系の学校」とのこと(キリスト教はKではなくCなのだが)。著者は「西洋文化への憧れと日本文化への卑下から、キリスト教への反発心は小さくなって、キリスト教系の学校への人気度が高まり、仏教系はいま一つとなっているのではないか」と推測する。もっとも、仏教系の学校にとって悪い話ばかりではない。東大・京大合格者の出身校を見ていくと、仏教系の学校が受験に強いという結果が出ているという。
本書でも指摘されているが、宗教系の学校には、その宗教の信者だけが入学するわけではない。だからこそ、「宗教に親しみを感じるか、宗教に敵対心を抱かない人が多く誕生すれば、宗教教育は成功したと言えるのではないだろうか」という本書の見解は、傾聴に値する。