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近代仏教を問う
本の紹介
  • 智山伝法院 (ちさんでんぽういん)
  • 廣澤 隆之 (ひろさわ りゅうし) 監修
  • 宮坂 宥洪 (みやさか ゆうこう) 監修
  • 出版社・取扱者 : 春秋社
  • 発行年月 : 2014年1月21日
  • 本体価格 : 本体2,500円+税

はしがき(廣澤 隆之)
I 近代仏教を問う
II 仏教の近代化とは何だったのか?
III 真言密教の実践的展開

本書は、真言宗智山派の教育研究機関である智山伝法院が主催した「近代仏教を問う」と題する3回の公開シンポジウムの記録である。近代仏教とは、おおよそ明治維新から終戦(1945年)までの仏教を指す。この時期、仏教は西洋由来の文献学中心の仏教学によって再解釈、再構成され、科学や合理的思考と矛盾しないような「仏教」イメージ(そもそも「仏教」という用語自体が近代仏教学の所産とされる)が指向されるようになった。しかし、その過程において、それ以前の伝統仏教が包含していた現世利益や死者供養などの、近代精神からはあまり好まれない諸要素は遠ざけられ、加持祈祷や呪術性に象徴される真言密教にいたっては「近代仏教学が侮蔑し続けてきた」(44ページ)とされる。本シンポジウムのねらいの一つは、このような「近代仏教を問う」ことによって、近代仏教が顧みなかった様々な伝統的価値を再評価することにあると思われる。

しかしながら、「近代仏教を問う」際に、一旦は近代を経験してしまった私たちが、それ以前の伝統的価値をそのままの形で受け入れられるかといえば、それも簡単な話ではない。浄土真宗の場合、近代精神と親和性が高い形で解釈された側面もあり(たとえば清沢満之など)、近代仏教の功罪が真剣に「問われる」ことが少なかったように評者には感じられるが、その意味からも、真言密教の立場からいかに近代仏教を再検証するのか、という本書が提示するテーマは、示唆に富む問題提起であると感じた。


評者:石上 和敬(武蔵野大学教授、浄土真宗本願寺派総合研究所委託研究員)


掲載日:2014年10月10日