- 出版社・取扱者 : KADOKAWA(角川ソフィア文庫)
- 発行年月 : 2013年10月25日
- 本体価格 : 本体800円+税
目 次 |
序文 文庫版まえがき 第一章 物理学-科学のパラダイムシフトから進展の方向性を探る 第二章 進化論-過去に一度だけ起こった生物進化を巡って 第三章 数学-思考だけで成り立つ美しい世界は絶対の真理なのか 付論 ペンローズ説の考察 第四章 釈尊、仏教-自己の努力だけをよりどころにした希有な宗教 第五章 そして大乗-仏教の多様性はいかにして生まれ、どこに向かうのか あとがき 未来の犀の角たちへ |
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我々が日常触れる科学は、現代までに積み上げられた科学である。そこで本書は、各分野における科学の成果を語り、それと宗教(とくに仏教)との関係を述べていく。
そもそも、科学の研究は“人智を超えた神の御業を解明し、理解することにあった”ということである。いわば、科学の研究とは「神の視点」を人間が得ようとすることでもあった。しかし、科学を深めていけばいくほど“世の真実は、人間という不完全な生き物の視点でしか現れてこない”という事実が判明してくる。
著者は、これを「人間化」と呼んでいる。その人間化という視点がそもそもの原始仏教の姿であるとつなげている。その後の大乗仏教では、人智を超えた超越者の存在を想定するという絶対神宗教に近づいたと指摘している。
しかし、本書において超越者として指摘されている阿弥陀仏の姿と、我々のいただく阿弥陀仏の姿には、少し乖離を感じられた。言及はないが、大乗仏教の人間化の姿が、私たちの拠り所である阿弥陀仏なのではないかと味わうことができた。
評者:雲居 玄道(浄土真宗本願寺派総合研究所研究協力者)
掲載日:2014年3月10日