- 出版社・取扱者 : 日本放送出版協会
- 発行年月 : 2007年3月30日
- 本体価格 : 本体1,000円+税
目 次 |
まえがき 第1章 始まりから 第2章 終わりへ 第3章 師と弟子 第4章 布施と社会 読書案内 あとがき |
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個々の原始仏典のエッセンスを紹介する「シリーズ 仏典のエッセンス」の1冊。著者は東京大学大学院人文社会系研究科教授で、仏教聖典の形成史に関する研究を専門としている。
本書で扱われるのは、釈尊の最後の旅路を記した経典として捉えられてきた『マハーパリニッバーナスッタンタ』<苦の消滅についての詳細な教え>(10ページ)。本書は、この経典に様々な角度から焦点を当て、これまで看過されてきた、この経典の実像を明らかにするとともに、「仏教の歴史全体を理解するためのいくつかの道標」(8ページ)を読者に対し、鮮やかに提示している。
著者はまた、ヨーロッパにおける仏教研究の成果を基礎として経典の解読を進める一方で、現在の仏教理解が、宗教改革以後のあらたな新約聖書学を基盤とした、ヨーロッパの仏教研究から大きな影響を蒙っていることを指摘している。著者がそのような態度から一定の距離をとって叙述を進めている(13ページ)ことも本書の大きな特色の一つである。
評者:江田 昭道(教学伝道研究センター研究員)
掲載日:2008年4月25日