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西域−流沙に響く仏教の調べ
本の紹介
  • 能仁 正顕 (のうにん まさあき)
  • 出版社・取扱者 : 自照社出版
  • 発行年月 : 2011年8月31日
  • 本体価格 : 本体2,400円+税

序文(桂 紹隆)
西域とは(能仁 正顕)
第1章 大谷探検隊の足跡
第2章 西域出土の仏教文献
第3章 西域にひろがる宗教世界
第4章 西域にひろがる仏教美術
インド仏蹟・チベット・シルクロード主要ルート図
大谷探検隊踏査ルート
執筆者一覧

インド発祥の仏教が中国に伝わるにはいくつかの経路があったが、西域(中央アジア)のシルクロード経由が主要なものであった。西域はかつて仏教が盛んな地域だったのであり、今も多くの仏教遺跡が眠っている。その地に19〜20世紀、当時の列強諸国から調査隊が派遣され、日本からは本願寺第22世門主・大谷光瑞師による大谷探検隊が1902〜1914年にかけて調査や資料収集にあたった。

本書は、大谷探検隊などによる西域調査の意義や成果、それをもとにした仏教研究を紹介した一冊である。本書が取り上げる研究成果の一つに「ウイグル仏教芸術の最高到達点ともいうべき」(251ページ)ベゼクリク(中国新疆ウイグル自治区トルファン近郊の石窟寺院)の壁画「誓願図」復元がある。龍谷大学の研究者が文系・理系の枠を超えた共同作業によって、損傷著しい壁画の復元に取り組んだ過程を描いている。復元された誓願図は現在、仏教総合博物館「龍谷ミュージアム」に展示されている。


評者:多田 修(教学伝道研究センター研究員)


掲載日:2012年01月10日